Assert Webの更新情報(2021-09-08)

【最近の投稿一覧】
9月1日 【投稿】新型コロナウイルスは「空気感染」
8月27日 【投稿】タリバンのアフガニスタン制圧
8月23日 【投稿】横浜市長選:菅政権・医療崩壊への審判--統一戦線論(75)
8月16日 【投稿】アフガン:バイデン政権・最悪のシナリオ--経済危機論(58)
8月16日 【書評】①山本章子『日米地位協定』②松竹伸幸『〈全条項分析〉日米地位協定の真実』
8月14日 【書評】「ロバート・オッペンハイマー 愚者としての科学者」
8月12日 【投稿】ニクソン・ショック50年の教訓に学ぶ、台湾とハイチを結ぶ闇
8月4日 【投稿】招き寄せたデルタ変異株感染拡大--経済危機論(57)
8月4日 【投稿】国民皆保険を破壊するコロナ中等症の自宅療養
7月27日 【書評】「鎌田浩毅の役に立つ地学」から考える地球温暖化論の虚構
7月25日 【書評】「メカニクス」の科学論
7月25日 【追悼】森信成先生没後50年によせて
7月25日 【投稿】バイデン政権・キューバ軍事侵攻の危険性--経済危機論(56)
7月24日 【投稿】「脱炭素」茶番劇と新エネルギー基本計画
7月20日 【メール便利用不可】 信念の呪縛 ケニア海岸地方ドゥルマ社会における妖術の民族誌[本/雑誌] (単行本・ムック) / 浜本満/著
7月18日 【投稿】米独サミットは「失敗だった」--経済危機論(55)
7月6日 【投稿】東京都議選が突きつけたもの--統一戦線論(74)
6月30日 【投稿】米・英・日:対中・対ロ軍事挑発の危うさ--経済危機論(54)
6月24日 【投稿】米英露の間に嵌る菅政権
6月23日 【投稿】G7への対案:ワクチンサミット--経済危機論(53)
6月17日 【投稿】米ロサミット:武力紛争・核戦争リスク低減への「対話」--経済危機論(52)
6月14日 【投稿】G7:コロナ・気候危機に対処不能を露呈--経済危機論(51)
6月14日 【書評】『泉佐野市税務課長975日の闘い』
6月8日 【書評】『白い土地—–ルポ福島「帰還困難区域」とその周辺』
6月5日 【書評】『9条の戦後史』】

【archive 情報】

MG-archive」に、以下の機関紙を追加しました。(9/8)
新時代紙第68号から、133号までの30号。
新時代(紙)リスト」から確認ください。追加号には「★」を付けています。

「Hata-archive」・「MG-archive」に、以下の機関紙を追加しました。(6/7)

新時代 号外 1978年8月1日 原水禁運動特集
新時代 第143号 1981年11月1日
新時代 第179号 1983年7月15日
青年の旗 1984年2月1日 第84号
青年の旗 1988年2月1日 第132号

「History」に「大阪市立大学 全学自治会選挙の経過(党派別当選数)」を追加(1/30)
「MG-archive」に「民学同 組織内文書リスト」を追加しました。(12/3)
「MG-archive」に「新時代(機関紙リスト)」を追加しました。(9/2)
「MG-archive」に「デモクラート(機関紙リスト)
」を追加しました。(8/25)

【準備中】
「民学同第2次分裂(B)」「民学同第3次分裂」のページを準備中です。

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【投稿】新型コロナウイルスは「空気感染」

【投稿】新型コロナウイルスは「空気感染」

                             福井 杉本達也

1 新型コロナウイルスは「空気感染」

米CDCのワレンスキ所長はコロナのデルタ株は感染力が大幅に強いと指摘し、感染者1人が他の8~9人程度に広める恐れがあるとした。水痘(水疱瘡)に匹敵するくらいの感染力があるとの見方を示した(福井:2021.8.2)。水痘は結核と同じく「空気感染」する。水痘の説明では「水痘の感染力は極めて強く、空気(飛沫核)感染、飛沫感染、接触感染によってウイルスは上気道から侵入し、ウイルス血症を経て、通常は2週間前後(10~21日)の潜伏期間を経て発病すると言われています。水痘を発病している者と同じ空間を共有(同じ部屋、同じ飛行機の中等)した場合、その時間がどんなに短くても水痘に感染している可能性があります。この場合水痘の空気感染を防ぐことのできる物理的手段(N95等のろ過マスクの装着や空気清浄機の運転)として効果的なものは残念ながらありません。水痘の感染発病を防ぐことのできる唯一の予防手段はワクチンの接種のみです。」(感染症・予防接種ナビ)とある。水痘並みの感染力なら新型コロナウイルスは「空気感染」そのものである。

2 あくまで「空気感染」を否定する尾身会長

尾身茂新型コロナウイルス対策分科会会長(当時の役職名)は記者会見でコロナの感染経路に触れ、「新型コロナウイルスの主要な感染経路は(1)飛沫感染(2)接触感染であることが知られているが、7月に入り、世界保健機関(WHO)がエアロゾル(マイクロ飛沫と同義)と感染との関連性について見解を示したほか、海外メディアが米大学の研究者らによる論文について報じている。」が、新型コロナウイルスは空気感染ではないとし、「マイクロ飛沫感染が『空気感染と誤解されると困る』(尾身氏)ためだといい、『普通に野外を歩いたり、感染対策が取られている店舗での買い物や食事、十分に換気されている電車での通勤・通学では、マイクロ飛沫感染の可能性は限定的と考えられている』と説明し、過剰な心配は必要ないとの見方を示した。」(Yahooニュース:2020.7.31)。その後も、尾身氏は「空気感染に関しては『起きていれば、東京が上げ止まりなんてことは絶対ない。それは起きていない』と改めて否定。」(Yahooニュース2021.5.21)と重ねて空気感染を否定している。そもそも「マイクロ飛沫感染」などという造語まで駆使してなぜ「空気感染」を否定する必要があるのか。 続きを読む

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【投稿】タリバンのアフガニスタン制圧

【投稿】タリバンのアフガニスタン制圧

                               福井 杉本達也

1 カブール陥落

8月17日付けの毎日新聞社説は「米同時多発テロから20年に及ぶ戦争の無残な終幕と言うべきか。アフガニスタン旧支配勢力タリバンが首都カブールを制圧し『勝利宣言』した。ガニ大統領は国外に脱出し、政権は崩壊した。…米メディアは、1975年のベトナム戦争の『サイゴン陥落』で大使館員がヘリで避難する映像に重ね、『カブール陥落』と表現した。米国にとって屈辱の光景だ。」と書いた。そして「2001年の米同時多発テロに対して…始まったのがアフガン戦争である。米英軍が、テロを主導した国際テロ組織アルカイダと、かくまっていたタリバンを攻撃し、…国際社会が隊列を組んだテロとの戦いだ。」と続け、最後に「最も懸念されるのが、アフガンが再びテロの温床となることだ…アルカイダの排除にも疑念が残る。…『カブール陥落』は、国際社会における米国の威信低下を加速させるだろう。米国主導の民主化は失敗したが、テロとの戦いは終わったわけではない。」と結んでいる。これが、日本及び米欧におけるアフガン戦争の一方的な見方であるが、何十万人ものアフガン人を虐殺した侵略戦争に対する反省のかけらもない。事実は全く異なる。

 

 

2 アルカイダ又はイスラム国(IS)とは何か。又、タリバンとは何か

アルカイダ又はイスラム国(IS)とは何か。ジェフェリー・サックス米コロンビア大学教授は「1979年以降、米中央情報局(CIA)は旧ソ連をアフガニスタンから追放するため多国籍のイスラム教スンニ派戦闘部隊『ムジャヒディン』(イスラム聖戦士)を組織した。この戦闘部隊とそのイデオロギーが、今でもISを含むスンニ派の過激派武装勢力の基盤になっている。」(日経:2015.12.7 原文Ending Blowback Terrorism 2015.11.19)と述べている。カーター政権下でブレジンスキー安全保障補佐官が始めたCIAプロジェクトは、ソ連をアフガンに誘い込み、ソ連を弱体化させ、それにより冷戦終結を早めることにあった。1979年、アフガンでソ連軍に対し非正規戦を行うべく、パキスタン、アフガンやサウジアラビアから急進的イスラム主義者を採用し、武装させ、1989年2月に1万4千人死者を出しソ連軍は撤退、その2年後にソ連邦は崩壊した。

ソ連邦崩壊により1992年にナジブラ政権がが打倒された後、アフガンでは、麻薬密売の軍閥指導者が権力を求め、残虐な内戦を経験した。タリバンは、新体制の担い手としてアメリカとパキスタンの情報機関によって組織されたものであるが、出現すると、内戦を終結させ、多くのアフガン人が彼ら支持した。しかし、2001年9月11日の米同時多発テロ事件を契機として、タリバンが、攻撃の首謀者とされたオサマ・ビンラディンとアルカイダを保護しているとして、10月7日、米主導の有志連合軍がアフガンへの攻撃を開始、タリバン政権は崩壊した。実際は、ソ連の脅威がなくなり、アメリカ軍産複合体は、膨大な予算を正当化する口実を失ってしまった。そこで9・11を利用して“イスラム教徒テロリストの脅威”が作り出された。同時に、旧ソ連邦を構成した中央アジアや中国の弱い下腹部:新彊ウイグルやチベットへの橋頭堡を築くための米国による軍事占領の言いがかりであった。軍産複合体のために”テロとの戦い“という「無限の戦争」を作り出すこと、ネオコンのウォルフォウィッツ(父ブッシュ政権の国防副長官)・ドクトリンである。

3 中国とロシアはアフガン復興に積極的に関与する

カブール陥落の前、中国の王毅外相は7月28日、天津でバラダル師率いるタリバンと会談し、王外相はタリバンを「アフガンでの決定的な力を持つ軍事・政治勢力だ」と評価、「アフガンの和平と和解、復興の過程で重要な役割を発揮できるだろ」と述べ積極的に支援することを表明した(共同:2021.7.28)。

かつてアフガンに軍事介入したロシアの場合は少し複雑であるが、「ソ連の終結は、外交政策に対するイデオロギー的制約からモスクワを解放し、よりプラグマテックに対応する道を開いた。」とし、「モスクワと中国政府は、タリバンに包摂的な政府を追求するよう説得し、政権を穏健化し、内戦を終わらせようとしている。この関与と非介入の政策はタリバンに利益をもたらす」とした。しかし、タリバンは「テロ集団としてリストアップされ、ロシアで禁止されており」(グレン・ディーセン:ロシアRT:2021.8.21)懸念を持っている。ロシアは下腹部のウズベキスタンなど中央アジアにアフガン難民に紛れてISなどのCIAの傭兵が入ってくることを極度に警戒している。それを防ぐにはアフガンの政治的・経済的安定が重要なのである。

ところで、旧ソ連軍のアフガン介入について、『青年の旗』はかつてどう見ていたのであろうか。第36号『主張』は「アフガニスタンヘのソ連軍進行を契機に、今までになく〝ソ連脅威″論と反ソ煽伝の音量が高まっている。国連での『外国軍撤退』決議採択によって、ソ連は第三世界からも見はなされ、世界的に孤立したとさえ言われている。しかし、アフガンで失敗したのは、米であり、中国であり、勝利したのは、アフガニスタンであり、ソ連である。」(主張:1980.2.1)と、ソ連軍の介入を全面的に支持していた。

しかし、1989年のアフガン撤退決定の前、故小野義彦先生は「たとえばアフガニスタンへの侵攻。その必要性は何もなかった。自分に都合のいい政府を他国に押し付けるのは、内政干渉である。内政干渉を行えば、一時的に都合のいい政府ができるかもしれないが、長持ちせず、逆にそういう行為を行ったことで、その国民全部を敵に回す。」(「ペレストロイカについて」:『青年の旗』第140号1988.10.1)と内政干渉への反省を述べている。

4 民営化された戦争―民間軍事請負業

「18,000人以上の国防総省請負業者がアフガニスタンに留まっており、他方、公式兵士は2,500人だ。」「アメリカ兵一人当たり、七人の民間軍事請負業者がいる。」「民間軍事請負業者を利用すると、国防総省と諜報機関は、議会による本格的な監督を避けられる。典型的に、彼らは民間警備請負業者や傭兵として、より大きい収入を得る特殊部隊兵役経験者だ。彼らの業務は全く秘密で、ほとんど説明責任がない。」「ダインコープは最大請負業者の一社だ。2019年時点で、ダインコープは、アフガニスタンで、アフガニスタン軍を訓練し、軍事基地を管理する政府契約で70億ドル以上得ていた。」(F. William Engdahl「ヘロインの政治学とアメリカのアフガニスタン撤退」『マスコミに載らない海外記事2021.4.28』)。

アフガンでの戦争は主にアメリカの軍事請負業者への「富の移転」である。ウィキリークスの創設者ジュリアン・アサンジが何年も前に、米国のアフガン戦争の背後にある本当の目的は「成功した戦争ではなく、無限の戦争をすること」であり、「米国の財政からお金を引き出す」ことであると指摘した。米国国防総省、国務省、USAIDなど、アフガン戦争に直接関与した米国政府機関は、約8,870億ドルを費やした。しかし、間接費が追加されると、アフガニスタンに対する戦争の全費用は2.26兆ドルを超えると推定される(PressTV:2021.8.24)。

5 麻薬の生産を中止するタリバン

麻薬は英国が中国を支配するきっかけをつくったアヘン戦争以来、侵略にはなくてはならない道具である。日本軍も日中戦争時にアヘンを徹底的に利用した。アヘンは満州国の財政を支えただけでなく、それが莫大な利益を生み、謀略資金になった。ベトナム戦争時においても米国はタイ・ミャンマー・ラオス国境の黄金の三角地帯でケシを栽培し謀略資金を供給した。今日、アフガンは世界の麻薬供給量の9割を占める。タリバンが一時的に支配した時期:2000年の3300トンから、2001年には185トンまでアヘン生産を減らした。アメリカの占領は国造りや民主主義が狙いではなかった。「狙いはヘロインだった。『アフガニスタンでの30年間、中央アジアでのアヘン違法取り引きに合致した時だけ、ワシントンの軍事行動は成功した』」「アヘン生産は侵略の一年後、2001年の約180トンから3,000トン以上に、2007年には、8,000トン以上に急増した。2017年までに、アヘン生産は記録的な9,000トンに達した。」「アフガニスタンのダインコープや他のアメリカ傭兵の公表されている仕事の一つは、世界のヘロイン推定93%を供給するアフガニスタン・ケシ畑破壊を『監督する』ことだ。…アヘンとその世界的流通は、…欧米ヘロイン市場への安全な航空輸送を保証する米軍、CIAの専門領域だということだ。」(F. William Engdahl 同上)。麻薬はアルカイダやIS、コロンビア傭兵など米軍産複合体による非公式戦争の大半を賄う“会計簿に記載されない”資金源である。ペルシャワール会の「中村医師が語ったところによれば、ISが支配を拡大した地域は、まだ 灌漑工事の恩恵が行き届かず、干ばつがひどい地域と重なり合っていた」(長沢栄治:長周新聞2020.1.4)と指摘しているが、灌漑による小麦の生産ではなくケシ栽培をさせようとしている。タリバンのザビジュラフ・ムジャヒド報道官はアフガニスタンが今後、麻薬の生産を中止することを明らかにした(Sputnik:2021.8.18)。

6 ドーハ合意

パイデン米大統領は24日、ホワイトハウスで演説し、米国人などのアフガンからの国外退避が順調に進んでいると強調した。31日までの米軍撤収を完了できるとの見方を示した。米はタリバンに対し、米国人らが円滑に国外へ退避できるよう協力を求めた。 一方、タリバンはアフガン人の空港へのアクセスを今後は認めない方針を示した(日経:2021.8.26)。カブール市内から空港への安全確保はタリバンが担っている。これは8月末までに米軍が撤収するというドーハ合意の履行が前提である。ドーハ合意は2020年2月29日に当時のトランプ政権下で、米政府のハリルザド・アフガン和平担当特別代表と、タリパン幹部のパラダル師が署名したもので、①米軍は21年春にもアフガンから完全撤収し(バイデン政権で8月末まで延長)、②タリパンは国際テ口組織の活動拠点としてアフガンを利用させない。③アフガン政府と将来の統治体制づくりの議論を行う。④捕虜のの相互解放などである(日経:2020.3.13)。

この米軍の撤収に英ジョンソン首相は強固に反対した。ブレア元首相も21日、米国のアフガニスタンからの撤収は「悲劇的で、危険で、不必要だ」と指摘、「大戦略ではなく、政治に突き動かされていた」と批判した(朝日:2021.8.22)。英国はこれまでも様々な策略をめぐらし、米国を永久戦争に追い込み、自らのヨーロッパやアジアにおける権益を確保しようとしてきた。これまで、米軍はシリア・イラクからアルカイダやISの一部戦闘員をアフガンへ運んだ。4000人の戦闘員がアフガンにいるといわれる。そしてアメリカ軍やCIAの特殊部隊、そして1万6000名以上の「民間契約者」は撤退せず、アフガンで活動を続けるのか。「民間契約者」の中には傭兵も含まれている。これらがどうなるのか。31日までには到底間に合わない。今後、アフガンは安定するのかどうかの試金石になる。8月26日にはカブール空港門前でISによる自爆攻撃が行われ、警備していた米兵13人を含む100人以上が死亡したといわれる。治安を不安定化させることで、傭兵やCIA・特殊部隊の暗躍の場を広げようとしている。これらを軟着陸させるのに中国やロシアの「関与と非介入」政策がかかっている。米軍撤退後の9月以降も米は領事機能を残す可能性もある(「タリバン:大使館存続米に要求」福井:2021.8.27)。日本は英国やNATO諸国などに追随して自衛隊機を派遣するのではなく、大使館機能を維持すべきである。

 

カテゴリー: ソ連崩壊, 平和, 政治, 杉本執筆, 青年の旗 | コメントする

【投稿】横浜市長選:菅政権・医療崩壊への審判--統一戦線論(75)

<<投票率11.84ポイント上昇>>
 その帰趨が注目された横浜市長選は、パンデミックによるコロナ禍にいかに対処するかが決定的争点となったと言えよう。菅政権のコロナ対策に「ノー!」が突きつけられたのである。
 有力候補の得票結果は以下の通りである。
                 得票数 得票率
山中 竹春    506,392   33.59
小此木八郎    325,947   21.62
林 文子        196,926   13.06
田中 康夫    194,713   12.92
松沢 成文    162,206   10.76

投票率は49.05%で、前回2017年を11.84ポイントも上回っている。単独での横浜市長選の投票率が長らく30%台で推移し、前々回、自民、公明、民主(当時)の3党が推薦した現職と共産党推薦の新人による事実上の一騎打ちだった2013年は、過去最低の29.05%を記録していたことからすれば、久方ぶりの高い投票率となったのである。
 とりわけ今回、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言下での選挙戦となったため、ソーシャルディスタンスを守ることを余儀なくされ、各陣営は大規模な演説会を自粛するなど活動を制限、その結果、投票率の低下が懸念され、各候補の得票率が法定得票にあたる25%に達しない場合は再選挙となる事態まで想定されていたていたにもかかわらず、投票率は下がるどころか逆に上昇したのであった。そしてこの投票率の上昇こそが山中竹春氏の勝利をもたらしたと言えよう。
 立憲民主党が推薦し、共産党と社民党が支援し、事実上の野党共同候補となった山中竹春氏は、有力候補の中では最も知名度が低く、従来の選挙パターンであれば、政権与党・保守基盤が圧倒的なはずであった小此木氏が圧勝する予測であった。たとえカジノ誘致をめぐる保守分裂があったとしても、パンデミック危機を抑え込めていれば、菅氏の地元で小此木氏はここまで大差をつけられて敗北することはなかったであろう。菅首相の選挙区である衆院神奈川2区(横浜市西区、南区、港南区)の各区でさえも山中氏の得票が小此木氏を上回る結果となっているのである。逆に言えば、小此木氏の足を引っ張ったのは、菅氏自身であったとも言えよう。
 コロナ感染危機対策でついに医療崩壊をまで招きだした菅政権・与党体制の危機対応に、感染者を「自宅療養」などという医療崩壊政策に、有権者から厳しい審判が下されたのである。この厳しい審判を自公連合の菅政権に何としても突き付けなければ、という有権者の意識こそが、投票率上昇をもたらしたのである。
 市内の新規感染者数が連日1千人を超え、その歯止めがかからない中、「コロナの専門家」とアピールし、「コロナの感染爆発は政治の問題だ」と切り込む山中氏の主張は、対決点が不明確で抽象的で総花的なスローガンの羅列に終始する野党共闘にあきたらず、これまであきらめ、そっぽを向いていた無党派層にも大きく支持を広げたのである。
 22日の投開票日に朝日新聞社が実施した出口調査によると、今回、無党派層は全投票者の43%で最大勢力であることが明確となっている。その無党派層から山中氏は、全8候補の中で最も多くの支持を集め、39%を獲得したのに対して、小此木氏は10%、現職の林文子氏は12%しか獲得していないのである。

<<新しい野党共闘のプラットフォーム>>
 菅内閣の支持率は、朝日新聞の世論調査で28%、NHKで29%、読売新聞は35%、8/21-22のANNの世論調査ではなんと25.8% にまで落ち込み、今や菅政権は崩壊寸前である。
 だがそれでも、立民、共産をはじめ野党の支持率はそれぞれ1桁台に沈み、低迷から抜け出せていない。(朝日8月7-8調査◆今、どの政党を支持していますか。自民32(前回30)▽立憲6(6)▽公明2(3)▽共産3(3)▽維新1(1)▽国民1(0)▽社民0(0)▽NHK党0(―)▽希望0(0)▽れいわ0(0)▽その他の政党0(0)▽支持する政党はない47(48))

8/18、佐高信氏をはじめ、日本体育大学教授の清水雅彦氏、山口大学名誉教授の纐纈厚氏、東京造形大学名誉教授の前田朗氏、安保法制違憲訴訟共同代表の杉浦ひとみ弁護士、NPO法人官製ワーキングプア研究会理事長の白石孝氏、ジャーナリストの竹信三恵子氏の7人が、参議院議員会館で記者会見を行い、7月28日に「いのちの安全保障確立に向けて非正規社会からの脱却を目指す運動を起こす」という理念で「共同テーブル」を結成したと発表している。賛同者は8/17日時点で185人とのことである。
 佐高信氏は、「これだけ、安倍、菅とひどい政権になっているのに、野党の人気がもう一つ上がらない。野党の顔が見えない」、「私たちの願いというものと野党は少しずれているんじゃないか。野党にはっきりと目鼻立ちをつける、そういう運動が必要なんじゃないか」と訴えている。
 野党共闘と統一戦線は、横浜市長選の勝利に浮かれているのではなく、今回の事態から真剣に教訓を学び取るべきであろう。
(生駒 敬)
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【投稿】アフガン:バイデン政権・最悪のシナリオ--経済危機論(58)

<<傀儡政権:1年半持つはずが一夜で崩壊>>
 8/15、日曜日、アフガニスタンの米国の傀儡政権・アシュラフ・ガーニ大統領と彼の国家安全保障顧問が首都カブールを脱出、米国の占領下で数十年にわたって米国が支援してきた政権、数万人のNATO軍と米軍によってのみ権力を維持されてきた政権が、たった一夜にして崩壊してしまったのである。
 バイデン大統領が、「アフガニスタンでのアメリカの軍事任務は8月31日に終了する」と発表したのは、7月8日の声明であった。その声明の中で、「アフガニスタンの運命はアフガニスタン政府と軍の肩にかかっている」、「自分たちの将来や国の運営方法を決めるのは、アフガニスタンの人々だけの権利であり、責任である」との立場を明らかにし、その時点で、ホワイトハウスは、カブールがタリバンに脅かされるまでには少なくとも1年半はかかるとの推定を明らかにしていたのであった。バイデン氏は、「私たちはアフガニスタンのパートナーにあらゆる手段を提供しました。強調させていただきますが、近代的な軍隊のあらゆる手段、訓練、装備を提供しました。先進的な兵器を提供したのです」と胸を張って語っていたのである。

 だが、タリバン側の攻勢により、カブールの陥落が90日、1か月と切迫し、8/31の米軍・軍事任務終了を待つどころか、8/15には米軍がカブール空港でさえ支配できない事態となり、前倒しで傀儡政権は「近代的な装備、先進的な兵器」を置き去りにして、逃亡・自壊してしまったのである。たった一夜での崩壊である。

 バイデン大統領は、「私は、アフガニスタンに米軍を駐留させた4人目の大統領であり、2人の共和党員、2人の民主党員である」と述べ、「私はこの戦争を5人目の大統領に引き継ぐつもりはありませんし、引き継ぐつもりもありません」と述べていた以上、もはや逆転のシナリオも、事態を糊塗する打つ手もなし、屈辱的な事態へとバイデン政権は追い込まれてしまったのである。
 「今回の撤退とベトナムで起きたことの間に類似点はあるか」と報道陣から質問を受けた際に、バイデン氏は、「全くない。ゼロだ」と答えていたのだが。タリバンがカブールを占領した時点で、すでに間違っていることが証明されてしまった。「もちろん、私たちはこの出来事をとても悲しく思っています。しかし、これらの出来事は悲劇的ではあるが、世界の終わりや、世界におけるアメリカのリーダーシップの終わりを告げるものではない」と弁解する以外に道はなくなってしまったのである。

<<「対テロ戦争全体がひどい失敗であった」>>
 事態は、単に屈辱的であるだけではないと言えよう。ベトナム戦争でのサイゴン陥落以来の、歴史的な事態であり、それ以上の歴史を画する、米欧支配体制の衰退とリーダーシップと信頼の崩壊、政治的・経済的・軍事的危機を象徴する事態、今回のカブール陥落はその重要な指標、象徴ともなろう。
 アメリカが主導したアフガニスタンでの戦争の人的経済的社会的費用の損失は、膨大であるばかりか、壊滅的でもある。
 公式の集計だけでも、この戦争中に164,000人以上ののアフガニスタン人、2,500人近くの米軍兵士、3,800人以上の米軍請負従事者、1,100人以上のNTO諸国軍兵士が死亡し、数十万人のアフガニスタン人、数万人のNATO要員が負傷している。これらに随伴する被害、損失は、さらに膨大なものと言えよう。
 米国だけの直接的財政的負担は2兆ドル以上、間接的費用と債務で6.5兆ドルをも費やし、建設的成果はゼロで、破壊と荒廃だけを山積させたのであった。
 米国の団体「Win Without War」のスティーブン・マイルズ事務局長は、「アフガニスタンで起きている悲劇的な出来事は、わが国の終わりなき戦争とそれを可能にする考え方が完全に失敗していることを改めて証明している」と述べ、「20年近くにわたる軍事介入と占領では、永続的な平和

は築けませんでした。どんなに多くの爆弾が投下されても、どんなに長く占領されても、そうはならなかったのです」と述べている。
 イギリスを拠点とするStop the War連合の呼びかけ人であるリンゼイ・ジャーマン氏は、8/15に発表した声明の中で、「対テロ戦争全体がひどい失敗であったことを認めるべきである」と述べ、「もし、この戦争に投入された資金のほんの一部でも、インフラ、住宅、教育、農業への投資を通じてアフガニスタンの人々の生活を改善するために使われていたら、アフガニスタンの人々の生活がどのように改善されていたかを考えるべきです」、「この機会を生かすことができたのに、軍事的解決策を優先して無視されてしまった。そしてそれが今日の状況をもたらしたのです」と、強調している。まさにこの視点こそが強調されるべきであろう。
(生駒 敬)
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【書評】①山本章子『日米地位協定』②松竹伸幸『〈全条項分析〉日米地位協定の真実』

【書評】 ①山本章子『日米地位協定』
      (2019年5月刊、中公新書、840円+税)
     ②松竹伸幸『〈全条項分析〉日米地位協定の真実』
      (2021年2月刊、集英社新書、880円+税)

 (一)
 2004年8月13日、イラク戦争が泥沼化する中、訓練中の米軍ヘリが沖縄の米海兵隊普天間飛行場への着陸に失敗。隣接する沖縄国際大学に墜落した。全長27メートル、約22トンのヘリの本体は大学本館に激突して爆発炎上、破片は周辺の民家29戸、車両33台に突き刺さった。ヘリの乗組員3名は負傷したが、大学が夏休み中であったこともあり死者や負傷者はいなかった。
 「事故直後、約100名の米兵が、普天間飛行場と大学を隔てるフェンスを乗り越えて大学構内に無断侵入する。宜野湾市消防本部が、米軍よりも早く到着して消火活動にあたり、ヘリの乗組員を軍病院に搬送していたが、米軍は消火に成功した市消防本部を立ち退かせ、道路も含めた事故現場一帯を封鎖した」(本書①より、以下同じ)。
 この後1週間、現場は、大学関係者をはじめ、市や県や沖縄県警や外務省の担当者全てが、米軍の注文によるピザ屋の配達員を除いて、米軍によって立ち入りを禁止された。「米軍は単独でヘリ機体の残骸や破片、部品とともに機体の油などが付着した大学の木や土を回収し、機体に使用されていた放射性物質の影響を検証した後でひきあげる。米軍側は、日本側にヘリ乗務員の氏名を明かすことも拒んだ」。
 「訓練から事故対応までに至る米軍のこれら一連の行動はすべて、日米地位協定にもとづいている」。
 これ以外にも、在日米軍基地周辺での事故や米軍兵士による犯罪は多くの人の記憶に残っている。そしてこれらのニュースを聞くたびにわれわれは怒りを覚えるとともに忸怩たる思いを抱くが、しかしかかる事件の背景に存在する日米安保条約と日米地位協定という壁にぶつかり、これに対して無力なままの現状に失望する。とりわけこれまで日米地位協定に対する改定、対等平等のへの要求が幾度も叫ばれながらも、ほとんど進展が見られないのは何故なのか。これら2冊の書はその手掛かりを与えてくれる。
 日米地位協定の起源は、1951年のサンフランシスコ講和条約締結の際に、独立後も引き続き米軍の駐留と基地の使用を認める日米安保条約と日米行政協定を結んだことにある。この後1960年の安保改定の時に、日米地位協定へと全面的に改定された。しかし在日米軍の既得権益である基地の管理権と裁判管轄権・捜査権については日米行政協定の内容が実質的に引き継がれている。
 本書①は、この背景に「日米安保改定の際に日米両政府が別途作成し、長らく非公開だった『日米地位協定合意議事録』では、日米行政協定と変わらずに米軍が基地外でも独自の判断で行動でき、米軍の関係者や財産を守れる旨が定められている」ことがあると指摘する。つまり地位協定条文の文言と実際の運用との間に乖離が存在してきたのである。
 本書①は述べる。
 「日米地位協定への批判は、より対等な改定の要求と結びついてきた。だが、二一世紀初頭まで非公開だった日米地位協定合意議事録に従って運営されてきた事実は、日米地位協定の改定によって問題は解決されないことを意味する。したがって、日米地位協定を論じるのであれば、改定に消極的な日本政府の安全保障政策のあり方や、その根幹にある駐軍協定としての日米安保条約の側面にも本来は目を向ける必要がある」。
 つまり在日米軍の駐留という視点から戦後の日米関係を見ることが、地位協定の見直し、改定への重要な環であるとする。この視点から本書①は、日米地位協定には規定がないが日本の負担となっている在日米軍駐留経費(「思いやり予算」)の経緯と問題点を指摘する。またNATO諸国やフィリピンが結んでいる地位協定と比較して、「日米安保の根幹的な問題とは、同盟関係を規定する条約と基地協定とが一体となっていること」が、「常に有事を想定した米軍の訓練」、「非常事態、緊急事態を前提とした基地の使用」を可能にしており、同時に日本政府の改定への自主規制の力として作用しているとする。
 そしてまた米国政府が地位協定の中で刑事裁判権・裁判管轄権に最も高い優先権を与える理由を、米国内世論の孤立主義を刺激しないため──すなわち「米兵・軍属が外国で『不公正』な司法制度によって裁かれた場合、米国政府が国民の支持を得て海外に軍を展開できなくなる可能性があるから」──であるとする。

 (二)
 本書②は、1960年の安保改定の際に行政協定が地位協定に改定されるに当たって、外務省が各省庁からの意向を聴取して57項目にまとめ、その条項の問題点と改定すべき方向を詳細に検討した「行政協定改訂問題点」(1959年)を軸に地位協定を検討する。残念ながらアメリカ側との交渉ではそのほとんどが認められなかったが、「政府に仕える官僚として日米関係の根幹を変えるような提案はできない、とはいえその範囲であっても主権国家としての意地は見せたい、しかしアメリカの厚い壁をなかなか崩しきれない──。そんな苦悩や意気込みと落胆」(本書②より、以下同じ)が見えてくるような文章であると述べる。
 そして本書②は、日米関係の実態は、「占領延長型」、「有事即応型」、「国民無視型」の三つに特徴づけられるとして、地位協定の条文を上段に、それに対応する行政協定の条文を下段に置き、その上で「行政協定改訂問題点」を紹介するという叙述で地位協定の全条項を検討する。専門的で細かい外交・法律用語も並ぶが、「日本政府が主権国家にふさわしい協定にすることをどの程度考えていたのか、その考え方は貫かれたのか挫折したのか」を解明する。
 その詳細は、面倒ながら本書②を読んでいただくほかないが、例えば、「第1条 軍隊構成員等の定義──禍根を残した『軍属』の曖昧さ」(副題は著者、以下同じ)に関わっては、2016年4月、沖縄で強姦目的で米軍属が女性を殺害した事件では、その軍属が米軍に雇用されていたのではなく、民間の請負業者(インターネットの関連会社)の社員であったが、そんな人間にまで「軍属」として地位協定で特権を与えていることが問題になった。
 「第6条 航空交通等の協力──軍事優先で米軍が管制を支配」では、法的根拠もなしに、羽田空港を出発して北陸、中部、九州方面に向かう飛行機の大半は(逆もしかり)、米軍横田基地の進入管制(横田空域)で米軍の許可を受けねばならず、広島、高松、松山各空港では、米軍岩国基地の管制(岩国空域)を受けねばならないという民間機が外国軍の管制を受けるという世界的非常識がまかり通っている。
 その他「第9条 米軍人等の出入国──日本側はコロナの検疫もできず」、「第13条 国税と地方税の支払──広範囲に免除した上に」と問題点が山積し、更には「第21条 経費の分担──特例が原則になっていいのか」では、地位協定に規定がない費用について特別協定が次々と結ばれ続けているなど、異常な状況が存在していると、指摘される。

 (三)
 以上地位協定の深刻な諸問題を提起している2冊であるが、ではここからの脱出の途は何処にあるのか。
 本書①はこう述べる。
 「現実に米地位協定改定が実現する可能性が低い以上、本書で論じてきた日米地位協定のさまざまな問題点は解決できないのか。そうではない。1960年に日米地位協定とともに日米両政府が取り交わした、日米地位協定合意議事録を撤廃するという方法がある」。
 その理由は、「第一に、合意議事録が国会の審議を経ていない点で正当性を持たないことだ。(略)正当性を持たない合意議事録を維持することは、日米地位協定そのものの正当性に関わってくる。/(略)/第二に、交渉の難易度が下がることだ。(略)合意議事録の撤廃という論点はシンプルであり、交渉期間の長期化を回避しやすい」と。
 ただし著者は安保条約支持の立場に立っており、これを提起するのには、「日米地位協定が抱える問題を放置することは、日米安保条約の脆弱性につながる。日米同盟を盤石にするためには、この問題から目をそむけずに解決する必要があるだろう」との視点からの日米同盟の対等化という主張であることには留意しておく必要があるだろう。
 また本書②は、「軍事にかかわる問題になると日本に決定権がないというのは悲しい現実です。そこから抜け出すのは容易ではないにしても、必ずやり遂げねばならないことです」として、「現行協定の不平等性を指摘して問題点を改定する闘いと、現行協定下であっても主権の平等という国家間の原理を貫かせる闘いと、その双方が求められる」と主張する。
 すなわち「たとえ文面に曖昧さがあっても、解釈次第では日本の主権を主張することが可能な場合も少なからずあるのです。そういう場合に、『地位協定が差別的で日本は主権を侵されている』と主張するのは、地位協定の問題点を明らかにすることには役立っても、『だから地位協定が変わらない限り現実をかえることはできない』とまで思い込んでしまっては、現状の協定下でも実現できる可能性を放棄することになりかねません」。
 また「協定の条文を骨抜きにするような密約がある場合も、『密約がある限り何もできない』とするのではなく、協定本文の建前を貫かせる闘い次第では密約を跳ね返す可能性があるということです」と示唆する。
 このように地位協定の改定の戦いには、状況に応じて一歩でも二歩でも陣地を広げていく地味な闘いの積み重ねが必要とされる。われわれの運動の視点を考えさせてくれる2冊である(R)

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【書評】「ロバート・オッペンハイマー 愚者としての科学者」

【書評】「ロバート・オッペンハイマー 愚者としての科学者」

                                            藤永 茂著 2021年8月 ちくま学芸文庫  1400円+税

                                                                                                   福井 杉本達也

1996年出版の『ロバート・オッペンハイマー 愚者としての科学者』(朝日選書)は、核兵器を開発した物理学者の犯した罪の問題を取り上げているが、長く絶版状態であった。中古本では7000円もの値がついていた。今回、その改訂版が「ちくま学芸文庫」として出版された。著者の藤永茂は1926年中国生まれ。九州帝国大学理学部物理学科卒業。京都大学で理学博士学位取得。九州大学教授を経て、現在カナダ・アルバータ大学名誉教授。著書に『分子軌道法』(岩波書店)、『アメリカ・インディアン悲史』(朝日選書)などがある。

「原爆を可能にしたのは物理学である。原爆の開発を政府に進言し、それをロスアラモスの山中でつくり上げたのは物理学者である。『原爆の父』ロバート・オッペンハイマーは『物理学者は罪を知った。これは物理学者が失うことのできない知識である』と言った。湯川秀樹は核兵器を『絶対悪』であるとしてその廃絶を唱えた。文芸評論家唐木順三は、その『絶対悪』を生んだ物理学そのものも『絶対悪』であると考えた。…核兵器は悪いが、物理学は悪くない、ということがあり得るか」と唐木は湯川を批判した。

「オッペンハイマーの名は科学者の社会的責任が問われる時にはほとんど必ず引き出される。必ずネガティヴな意味で、つまり悪しき科学者のシンボルとして登場する。オッペンハイマーに対置される名前はレオ・シラードである。シラードは科学者の良心の権化、『あるべき科学者の理想像』として登場する。このおきまりの明快な構図に、あるうさん臭さ」を著者は感じ取った。答は簡単である。「私たちは、オッペンハイマーに、私たちが犯した、そして犯しつづけている犯罪をそっくり押しつけることで、アリバイを、無罪証明を手に入れようとするのである」と書いている。

「オッペンハイマーは腕のたしかな産婆の役を果たした人物にすぎない。原爆を生んだ母体は私たちである。人間である」。「『人は人に対して狼なり』という西洋の古い格言がある。人間が人間に対して非情残忍であることを意味する」。「人間ほど同類に対して残酷非情であり得る動物はない。人間が人間に対して加えてきた筆舌に尽くしがたい暴虐の数々は歴史に記録されている」。「私は、広島、長崎をもたらしたものは私たち人間である、という簡単な答に到達した」。とし、「責任の所在をあいまいにする答で『物理学を教えてよいのか、よくないのか』という切実な問題に対する答も出てきた。『物理学は学ぶに値する学問である』」として、本書においてロバート・オッペンハイマーを描くことを始めた。

そういえば、物理学者の佐藤文隆が「1999年3月、アメリカ物理学会創立100周年の行事がアトランタであった。…ある晩、郊外の自然史博物館の建物を借りきってパーティーがあった。…アトラクションの一つに 、デズニーランドでのミッキーマウスのぬいぐるみのように、大物理学者に扮装した人物が歩き回って、それらと一緒に記念写真を撮る趣向があった。過去100年の大『物理学者』にはアインシュタイン 、キュリー夫人 、オッペンハイマーが選択されていた。…物理学者としてアインシュタインやキュリー夫人と並んで写真に収まるのがワクワクするように」、しかし、ノーベル賞も受賞していない「オッペンハイマーと並ぶのが多くの参加者にはワクワクすることなのである。そういう意味での『選択』なのである」(京都新聞日曜随筆欄「天眼」:2015.8.30)と書いていた。

著者は第11章「物理学者の罪」で、「オッペンハイマーの『物理学者は罪を知った(Physicists have known sin)』という言葉は、1947年11月25日、マサチューセッツ工科大学(MIT)で行われた講演『現代世界における物理学』の中で語られた。『戦時中のわが国の最高指導者の洞察力と将来について判断によってなされたこととはいえ、物理学者は、原子兵器の実現を進言し、支持し、結局その成就に大きく貢献したことに、ただならぬ内心的な責任を感じた。これらの兵器が実際に用いられたことで、現代戦の非人間性と悪魔性がいささかの容赦もなく劇的に示されたことも、我々は忘れることができない。野卑な言葉を使い、ユーモアや大げさな言い方でごまかそうとしても消し去ることのできない、あるあからさまな意味で物理学者は罪を知ってしまった。そして、これは物理学者が失うことのできない知識である。』」と書いている。

著者は文庫版あとがきにおいて、1945年7月16日の史上初の原子爆弾の炸裂時に、オッペンハイマーの心中に、人間としての悪行の正当化と自己弁護として閃いたとされる「われは死となれり、世界の破壊者となれり」というヒンズー教の聖典『バガヴァド・ギータ』の一行のエピソードを再度否定する。晩年のオッペンハイマーは「原爆製造もヒロシマ・ナガサキの壊滅も『ギーダ』によっては正当化できないことを自覚していた」とし、「ロバート・オッペンハイマーが、特異な歴史的人物として、今なお盛んに論じられている米国の現状を、私は歓迎しない。この現象は米国人が核兵器の問題に正面から向き合うことを妨げている」と締めくくっている。

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【投稿】ニクソン・ショック50年の教訓に学ぶ、台湾とハイチを結ぶ闇

【投稿】ニクソン・ショック50年の教訓に学ぶ、台湾とハイチを結ぶ闇

                      福井 杉本達也

1 暗殺されたハイチ大統領

共同通信サンパウロ支局による「ハイチからの報道によると、同国のモイズ大統領が7日未明、首都ボルトープランス近郊の自宅に押し入った武装集団に暗殺された。大統領夫人も撃たれて病院で治療を受けている。武装集団の身元は不明だが、スペイン語や英語を話していたという。」ハイチでは今年2月にはクーデター未遂が起きるなど政情が不安定である(福井:2021.7.8)との小さな記事がある。日本とハイチとの外交関係は現在、隣接国の在ドミニカ共和国大使館が兼轄しており非常に希薄である。対日輸出額が4.71億円、対日輸入額は22.7億円と非常に少ない。1人当たりGNIは790米ドルと世界の最貧国に位置付けられる。たとえ大統領が暗殺されたとしても、日本では、政情不安の極貧国でよくある内紛のケースとかたずけられてしまうであろう。

 

2 なぜか台湾大使館が大統領暗殺事件に関与

ところが事件はそれでは終わらなかった。ロシアRTは「ハイチの大統領は、元コロンビア軍とハイチ系アメリカ人の『外国の暗殺部隊』によって殺され、「台湾大使館」内で11人を逮捕」との見出しで、「ハイチの国家警察は、2人のアメリカ人と26人のコロンビア人がジョヴェネル・モイズ大統領の暗殺の責任があると主張し台湾は外交施設で11人の逮捕が行われたことを確認した。少なくとも28人が今週初めに殺人計画を実行した」と報じたのである(2021.7.9)。これを裏付ける台湾側の報道として、中央社フォーカス台湾は「8日早朝、武装集団が首都ポルトープランスの在ハイチ中華民国大使館の敷地内に侵入し、警察に逮捕された。外交部(外務省)が9日、明らかにした。」と書いている(2021.7.9)。

この続報として、日経メキシコシティの宮本英威記者は「首謀者の一人とみられているのが、同国出身で米南部フロリダ州在住の医師」であり、「米フロリダ州に拠点を慣くベネズエラ系警備会社のCTUを介してコロンビアの元軍人を実行犯として雇ったとされている。」「ハイチ聾察はこれまでハイチ系米国人3人とコロンビア人18人を逮捕した。」米国人のうち1人は過去にDEA(米麻薬取締局)の情報提供者だった。」と書いている(2021.7.14)。

2020年5月にはワシントンの傭兵がベネズエラ当局に捕らえられているが、フロリダのアメリカ民間軍事企業と契約を結び、コロンビアで戦士を訓練し、ベネズエラのマドゥロ政権を打倒するためベネズエラ領に潜入す手はずであった。周知のようにコロンビアは世界中(特にアフガン)からの麻薬の中継基地である。米フロリダ州とコロンビアの傭兵と麻薬が揃えば状況証拠は十分である。逃げた傭兵が台湾大使館の敷地内に単に侵入したなどということはない。台湾大使館も犯行後の逃走経路として大統領暗殺に一役かっていたといえる。

ハイチでは1991年と2004年に軍事クーデターがあり、「解放の神学」を唱えていたカトリックの神父で国民に支持されていたアリスティド氏が大統領の座から引きずり下ろされた。その背後にはCIAがいた。ハイチは金鉱脈が存在し、潜在的には豊かな国であるが、アメリカやフランスの略奪を受け、国民は貧困で、失業率は70%を超す。2010年1月には大きな地震があり、10万~32万人が死亡したと言われている(参照:「櫻井ジャーナル」2018.1.14)。

 

3 モイズ大統領は中国の「ワクチン外交」に寝返ろうとして暗殺されたのか?

ハイチは台湾と外交関係を持つ15か国の1つである。日経の8月6日の記事は「中国は台湾を国際社会で孤立させる戦略の一環で、台湾と外交関係を持つ国々への経済支援をテコに断交を働きかけてきた。」「中国は新型コロナのワクチン供給を条件にハイチへの圧力を強めている。『ワクチン外交』を推進する中国はドミニカなどに中国製ワクチンを支援しているが、ハイチには提供していない。」「台湾の蔡英文総統は外交関係のつなぎ留めに腐心している。」とかなり踏み込んだ分析を行っている。事件の真相は今もやぶの中ではあるが、状況証拠を積み重ねた記事は信ぴょう性が高い。

 

4 台湾に前のめりの「令和3年版防衛白書」と岸防衛相

「令和3年版防衛白書」の刊行によせてにおいて、岸防衛相はわが国は「自由や民主主義、法の支配、基本的人権の尊重といった普遍的価値の旗を堂々と翻す国となりました。我々は、志を同じくする仲間と手を携え、インド太平洋地域における普遍的価値の旗手として、自由を愛し、民主主義を信望し、人権が守られないことに深く憤り、強権をもって秩序を変えようとする者があれば断固としてこれに反対していかなければなりません。」と書いている。さらに記者会見において「米国は、台湾への武器売却、あるいは米軍艦艇による台湾海峡通過といったですね、トランプ政権以降に台湾への関与をより深めていく認識を示し、バイデン政権においても、台湾を支援する姿勢を明確」にしており、「台湾をめぐる情勢の安定は、わが国の安全保障にとってはもとより、国際社会の安定にとっても重要」であると踏み込んだ。

 

5 ニクソン・ショックから50年―歴史に何も学ばない安倍・岸ら「親台湾派」

周知のように岸信夫防衛相は安倍晋三前首相の実弟であるが、中国網は東京五輪のさなかの7月29日、日本の「一部の国会議員は米国の一部の国会議員とぐるになり、台湾地区の『議員』を引き込みいわゆる『第1回台米日議員戦略フォーラム』という茶番を演じた…日本の前首相である安倍晋三氏が自ら登場した。」。「これらの『親台派』は『中国人民が中国共産党を選んだ』という歴史的現実を受け入れたがらない保守派勢力が中心だ。」とし、「中国の発展及び中日関係の安定的な関係促進に伴い、『親台派』の中日関係への影響が日増しに衰えた。そこで彼らは米国の親台議員と合流し、米国の中国けん制政策を利用し自身の影響力を拡大することを選んだ。」と報じた(中国網:2021.8.9)

8月7日の日経コラム「大機小機」は「 2つのニクソン・ショックから50年がたち、世界は一変した。ニクソン米大統領の声明で金ドル本位制が終わり、訪中で中国は世界の表舞台に登場した。その中国はいま通貨でも軍事でも米国の覇権に挑戦する。… 2つのニクソン・ショックに最もあわてたのは日本だった。円安の固定相場に安住してきた日本は円高恐怖症が抜けず、プラザ合意後のバブル崩壊で経済敗戦を喫する。一方、「頭越し」のニクソン訪中は受け身の外交に活路はないことを示した…対話を通じて新冷戦防止をめざすことこそ日本の役割だ。ニクソン・ショック50年の教訓である」と書いている。「親台派」の言動に惑わされることなく、中米・ハイチにおいて台湾が何をしているかをもう一度考えてみる必要がある。

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【投稿】招き寄せたデルタ変異株感染拡大--経済危機論(57)

<<コロナ禍による世界的な格差拡大>>
 8/2に発表されたIMF(国際通貨基金)の最新レポート「対外セクター報告書」は、「世界中のあらゆる人にとってパンデミックを終息させることが、さらなる格差拡大を防ぐ世界的な景気回復を実現するための唯一の方法である。そのためには、各国がワクチン接種のための資金を確保し医療を維持できるよう支援する世界的な取り組みが必要となる。」、「世界全体で一斉に投資を推進したり、パンデミックを終息させ回復を下支えするために医療支出を一斉に拡大したりすれば、世界的な収支を拡大させることなく世界の成長に大きな影響を与えられるかもしれない。」、「各国政府は、貿易摩擦や技術摩擦を解決し、国際課税制度を刷新するための取り組みを強化しなければならない。医療製品に関するものを中心に関税や非関税障壁を段階的に撤廃することが最優先課題のひとつとなる。」と、訴えている。
 この報告の直前、7/27に発表されたIMFのレポート「さらに進む分断 世界経済回復の格差拡大」では、「先進国では人口の40%近くがワクチン接種を完了しているのに対して、新興市場国ではその割合は11%に過ぎず、低所得途上国ではごくわずかにとどまっている。予想よりも早いワクチン接種と経済活動の正常化が上方修正を可能にした一方で、インドをはじめとする一部の国ではワクチンへのアクセスの不足と新型コロナの新たな感染の波が下方修正につながった。」「世界全体でワクチンや診断法、治療法への迅速なアクセスを実現するには多国間行動が必要となる。それにより、無数の人命が救われ、新たな変異株の出現が阻止され、世界経済の成長を数兆ドル押し上げることになるだろう。IMF職員は最近、パンデミックを終息させるための提案を行っており、世界保健機関(WHO)および世界銀行、世界貿易機関(WTO)が賛同したこの提案では、500億ドルを投じて2021年末までにあらゆる国で人口の40%以上、2022年半ばまでに同60%以上にワクチンを接種するとともに、十分な診断法と治療法を確保することが目標として掲げられている。この目標を達成するには、余剰ワクチンを抱える国が2021年中に少なくとも10億回分のワクチンを分配し、ワクチン製造業者が低所得国や低中所得国への供給を優先する必要がある。ワクチンの原材料と最終製品に関する貿易制限を撤廃し、十分な生産を確保すべく各地域のワクチン生産能力に追加投資を行うことも重要である。また、低所得国を対象とする診断法と治療法の提供やワクチン体制確立のために、前倒しの無償資金約250億ドルを用意することも不可欠である。」と、より具体的な対策を訴えている。このIMFレポートは、ウイルスが他の場所に蔓延している限り、現在感染が非常に少ない国でも回復は保証されていないとまで述べている。さらに「「感染性の高いウイルス変異体の出現は、回復を妨げ、2025年までに世界のGDPから累積で4.5兆ドルを一掃する可能性があります」と警告している。
 ところが実態は、こうした警告が無視され、当然取られるべき対策がほとんど実行に移されてはいない。先進国政府や国際機関は表面上は賛同しながらも、むしろ、実体は意識的になおざりにされ、ネグレクトされている。
 その筆頭が、ワクチンと治療薬の知的財産権保護を一時的に放棄することを決定すべきWTOが、審議と前進への進展がないまま、このほど6週間の長期休暇に入ってしまったのである(7/27)。
 世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は、「世界各地でCOVID-19の第3波が猛威を振るい、米国では致死性のデルタ型が主流となっています。世界中で必要なワクチンの生産を拡大するためには、今すぐにワクチン特許権の放棄が必要です。世界貿易機関(WTO)での緊急性の欠如には困惑させられます。WTOが1ヶ月間の休暇に入ってしまっては、その実現は不可能です。WTOが人命よりも大手製薬会社の利益を優先させることは許されません。彼らが行動を起こさなければ、世界中の人々に壊滅的で永続的な影響を与えるでしょう。」と嘆息する事態である。

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【投稿】国民皆保険を破壊するコロナ中等症の自宅療養

【投稿】国民皆保険を破壊するコロナ中等症の自宅療養

                       福井 杉本達也

1 新型コロナの無為無策 自宅で死ぬなどあってはならぬ

「政府は2日、新型コロナウイルス感染症の医療提供体制に関する閣僚会識を首相官邸で開き、入院対象を重症者らに限定する肯針を決めた。肺炎などの症状が ある中等症のうち重症化リスクが低い人は自宅療養」とする…「病床不足への懸念が強まっているため、事実上の方針転換」を行った(福井:2021.8.3)。これに対し、元厚労相で前東京都知事の舛添要一 氏は「中等症以下のコロナ患者を自宅療養とする方針転換は、データに基づく説明がない。緊急事態宣言発令よりも国民の命により影響する」とバッサリ。さらに、コロナ患者の急増を火事に例え、「患者の急増で病床が足りないという理由だけなら、火災が増えて消防車が足りないので、小家屋は燃えるに任せると言うに等しい」。「真剣にコロナを収束させる決意があるのか」と、政府の無策ぶりを批判した(参照:スポニチ2021.8.3)。また、ナビタスクリニックの久住英二氏は「『この人は重症化しない』と決められる検査や診断基準がない以上、軽症から中等症に悪化した人は、重症化する事を念頭において治療しなければならない 中等症を入院をさせないのは、大きな誤りだ。中等症を自宅療養にすれば、入院させて経過を見るより死亡率は高くなります それを承知での、この決定だとすると、日本という国家は、国民を切り捨てたということです」と批判している(2021.8.3twitter)。

自民党や公明党など政府与党からも中等症の自宅療養の撤回を求められていることに対しても、「撤回ではなく、しっかり説明するようにということだ。必要な医療を受けられるようにするための措置だから、丁寧に説明し、理解してもらう」、「自宅(療養)の患者もパルスオキシメーターや電話など、状態に応じてこまめに連絡をとれる体制をつくり、症状が悪化したらすぐ入院できる」と官邸で記者団に語たり、居直った(産経:2021.8.4)。入院させるべき患者を入院させないということは、国民皆保険制度の完全なる放棄であり、棄民政策である。宇都宮市インターパーク 倉持呼吸器内科院長の倉持仁氏はtwitterで、「無為無策 自宅で死ぬなどあってはならぬ あんぽんたんとはもはや言わじ」、「皆保険制度をオリンピックをやりつつ放棄し、指定感染症の法を自助なしに放置。この人に政治を司る資格なし!すぐやめてください。」(2021.8.3)と述べている。8月4日の国会の閉会中審査でも長妻昭氏など野党が追及したが、国民皆保険の完全なる破壊であるという視点が全く弱い。

2 感染症法の諸規定を自ら破ると宣言した違法国家日本

医療ガバナンス研究所の上昌弘氏は「コロナ対策、いよいよ滅茶苦茶になってきました。中等症以下を自宅に返すと福島技監らが決め、患者の医療機関の分担、選択と集中を放棄、保健所は重症になるまで自宅待機を指示しています。メルクマールはSPO2で機械的に切っているとか。」、「こうなれば、感染症法から外して、現場に完全に任せればいいのに中等症以下の自宅待機って、医系技官が勝手に感染症法を廃止したのと同じです。これは国会で審議すべき内容で、保健所一本背負いが手に負えなくなって投げ出しました。どうして、野党やメディアは追及しないのでしょうか?菅さん、どうして、こんな滅茶苦茶を許したのでしょうか。」、「政府の仕事は病床確保です。国立病院機構やJCHOで受け入れればいいだけです。彼らの設立は、設置根拠法に公衆衛生危機に対応することが唱われています。」、「感染症法は、感染抑止と患者の治療のため、強制入院の権限を知事に付与しています。これは、その目的のために、入院義務を自治体に課するものです。医療体制を構築できず、供給抑制のため、入院基準を感染抑止と患者の治療以外の要素で絞りこむのは、裁量権の逸脱濫用で違法です。」、「国賠訴訟が出る可能性があります。もし、亡くなれば、正林局長は、業務上過失致死で告訴されるでしょう。そのくらい酷い問題です。」(twitter2021.8.3)と述べている。菅首相自らが感染症法の諸規定を破ると堂々と宣言したのである。前代未聞の違法国家である。即退陣すべき事態である。また全国知事会も情けない。こんな国家に何を要望しても始まらない。各都道府県で医療確保と検査体制を整えるべきである。5月の大阪の医療崩壊の時には、大阪大学の医学部付属病院は36床あるICUを全てコロナ対応に回した。各県知事はその程度の病床の調整はできるはずだ。国民皆保険制度や自らが作った感染症法を破壊する国に任せていては国民の命は守れない。

3 大企業優先のワクチン接種から始まった国民皆保険制度の破壊

デモクラシー・タイムス7月15日版「ワクチンだけで『勝利』はない」において、東京大学先端研の児玉龍彦氏は格差ワクチンについて「力を持っているものが企業で(ワクチンを)先に打っていい。命は平等だという国民皆保険の精神をぶち壊している。カネと力を持っているものが先に打っていいということを政府が公然と言い出した。大企業・大都市・男性・正規職員・政権に近いマスコミや芸能団体に配っていいということを言い出したということは、人倫理的に歴史的大失敗をやっていることだと思います」と述べている。また立教大の金子勝氏も付け加えて「オリンピック関係者も同じです。国民の恨みを買う配分の仕方です」とし、「自治体中心にもう一度、命を守るという順番でワクチンを打っていくということが重要です」と述べている。職場接種において、公然と大企業優先でワクチンの配分が行われ始めたことが、国民皆保険制度の政府による破壊の開始である。これを野党もマスコミもまともに追及していない。このままでは、日本の医療制度は米国並みに落ち込んでいくことになる。

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【書評】「鎌田浩毅の役に立つ地学」から考える地球温暖化論の虚構

【書評】「鎌田浩毅の役に立つ地学」から考える地球温暖化論の虚構

(『週刊エコノミスト』2020年4月より連載中)

                         福井 杉本達也

7月26日の日経は、温暖化ガス削減「30年度計画案の内訳」:「産業で37%減」、「家庭では66%減」との見出しである。しかし、よく記事を読んでいくと「国際公約の46%削減には6億4800万トン減らす必要がる」が、産業部門は「電力供給に占める再エネの比率を36~38%、原子力発電を20~22%に高めることを前提とする」ものの、原発は「利用拡大の道筋は見通せていない」中で、「全体で46%減らすための辻つまあわせで割り振った印象が強く実効性が課題となる」と、投げやりの書きぶりが目に付く。

近年の地球温暖化は、人為的な気温上昇によるとするとし、IPCCによれば化石燃料の燃焼や土地利用の変化といった人間活動の結果、炭素重量に換算して、大気中に40億トン/年が増加しているという。これを「産業革命前と比べた気温上昇をできだけ1.5度以下に抑える」、「そのためには30年までに世界全体の排出量を10年比で45%削減し、50年までにゼロにする必要がある」というものであるが、人為的温暖化を人為的に抑え込むという発想自体に西欧科学技術の傲慢さがある。いつから「科学技術」は地球を創造する「神」の地位を占めるようになったのか。

「鎌田浩毅の役に立つ地学」は2020年4月から『週刊エコノミスト』誌に連載され、地球温暖化だけを論じているものではないか、地学の観点から地球温暖化に対してもアプローチしている。その中から何点か本質的なものを以下に抜き出してみる。

1地球内部を大循環する炭素

「大気中の二酸化炭素の濃度や量は、地球内部で行われている「炭素循環」と深く関連し、数億年にわたる地球環境をつかさどる動きに大きく左右されている」。「地球環境は「固体地球」「流体地球」という二つの領域に分けられ、炭素循環もその両者にまたがって起きている」。「炭素は固体地球の内部で長い年月をかけて循環し、その主役は地球全体の質量の8割を占めるマントルである」。「 約1億年の周期でマントル対流を起こすことにより、上部にある地殻へ炭素が供給され」、「その際、 炭素はホットプルーム(上昇流)とコールドプルーム(下降流)という二つの巨大な流れに乗って循環する」。(『エコノミスト』2021.6.1)

2 『炭素循環』が決めるCO2濃度

「大気中の二酸化炭素濃度を決めるのは『炭素循環』と呼ばれる現象である。地下深部のマントルに含まれている二酸化炭素は、大洋底の中央海嶺の火山活動によって海中へ放出される。同様に、海洋プレートが大陸プレートの下へ沈み込む地域では、マグマが大陸を貫いて地上に噴出し、二酸化炭素を大気中へ放出する。次に大陸上では、二酸化炭素は雨水や地下水に溶けて炭酸(H2CO3)となる。炭酸は、川を経て海に流れ込み、炭酸カルシウム(CaCO3)などの炭酸塩鉱物として沈殿する。それらが何千万年という時間をかけて海洋プレートとともに移動し、最後にプレートの沈み込みに伴って大陸プレートに付加される。付加されたものの一部は、沈み込みとともに地球深部に運ばれ、火山活動によってマグマとともに再び地表へ放出される。このように、炭素はさまざまなプロセスを通じて循環している。」「大気中の二酸化炭素濃度は、こうした地球スケールの炭素循環によってたえず調整され、現在まで安定した環境が維持されてきたのである。」(『エコノミスト』2020.12.15)

3 炭素の大気と海水の間での大循環

「約1億年前の白亜紀にホットプルム由来の大規模な火山活動が起こり、マグマに含まれる二酸化炭素が大気と海洋に供給された。その後、陸上に繁茂した植物が光合成によって二酸化炭素を吸収し、炭水化物として地表付近に固定された。こうして大量に蓄積された植物の遺骸は、その後に腐食・埋積されて数百万年という長い時間をかけて地中で石炭と石油に化学変化した。すなわち、マントルが媒介して固体地球と流体地球が関わる炭素循環なしには、人類を長年支えてきた化石燃料は誕生しなかったのである。」

「海水に溶け込んだ二酸化炭素は各種の陽イオンと化学反応を起こし、大量の炭素化合物を海底に沈殿させた。こうしたプロセスを経て大気と海水の間で平衡状態が作り出され、大気中の二酸化炭素濃度がコントロールされてきた。」「二酸化炭素は流体地球を構成する海水と大気の間で絶えず大規模に循環しながら、長い間に平衡を保ってきた」のである。(『エコノミスト』2021.6.8)

4 太陽との距離も気温に影響

「過去40万年間の地球と太陽の距離と、平均気温の変化との関係を見ると、両者に関係があることが分かる。すなわち、地球と太陽の距離が大きい時には、地上に届く太陽エネルギーが減少するため、平均気温が低下する。反対に距離が小さい時には太陽エネルギーが増加するため平均気温が上昇する。こうした変動によって氷期と間氷期の繰り返しが生じた」とセルビアの地球物理学者: ミランコピッチの説を紹介している。

「近年の地球温暖化は、人為的な気温上昇によるとする見方が多いが、実は気温変化には太陽の距離などはるかに大きな要素が大きく作用している。」(『エコノミスト』2021.6.15)

5 大気中の二酸化炭素濃度は3億年前の氷河期時代と現在は同じ

「地球の長い時間軸の中では、大気中や海水中の二酸化炭素が炭酸カルシウム(CaCO3)として固定される速度と、火山活動により二酸化炭素が大気中に放出される速度とが、ほほ等しくなっている」「短期的な二酸化炭素濃度の揺らぎは、長期的には平衡状態へ戻っていく。例えば、マントルの対流が活発化して地上に大量のマグマが噴出すると、二酸化炭素の供給量が増えて長期的な温暖化に向かう。その結果、大気中の二酸化炭素の海水に溶ける量が増え、次第に大気中の二酸化炭素濃度が低下する。」「現在の大気中の二酸化炭素濃度は、寒冷期に当たる非常に低い水準と言えよう。したがって、いま世界中で問題にされている地球温暖化も、こうした『長尺の目』で見ると再び氷期に向かう途上での一時的な温暖化とも解釈できる。」「大気中の二酸化炭素濃度は、こうした地球スケールの炭素循環によってたえず調整され、現在まで安定した環境が維持」されているのである。(『エコノミスト』2020.12.22)

ニュートンに「私は仮説をつくらない」という科学的認識の有名な言葉がある。ニュートンは、具体的な現象から導き出せないものはどんなものでも「仮説」に過ぎないと考えた。根拠のない前提や規則を「仮説」と呼び、現象や経験から導き出せないものを排除しようとした。「人間は自分が立てた仮説や規則に弱い」という洞察がある。いつのまにか仮説が先入観となり、虚心坦懐に物事を正しくとらえられない場合がある。(鎌田浩毅「理系の教養ニュートンの大古典に挑む」:2019.9.27)。

地球温暖化論は「仮説」である。地球物理学のこれまでの知見を無視して「仮説」を「科学的」だと大上段に構えてはならない。「仮説」というしっぽが「世界」という胴体を振り回している。二酸化炭素はわれわれの生活になくてはならない「空気」の一部である。水や空気という地球生命にとって最も重要な『社会的共通資本』に対し、排出権取引や炭素税として価格をつけるものであり、温暖化対策を主導する欧米の金融資本が儲け、経済的弱者や発展途上国は重い負担にあえぐこととなる(日経:「カーボンゼロ CO2値付け世界で拡大」2021.7.27)。「カーボンプライシングの導入にあたっては企業の負担軽減策がつくられ、企業は製品やサービスに価格転嫁する見込みだ」(日経:同上)。市場原理主義はあらゆるものをカネに変えようとする。二酸化炭素を含む空気は地球の生命にとって最も大切なものである。カーボンプライシングほど反生命的・非倫理的なものはない。

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【書評】「メカニクス」の科学論

【書評】「メカニクス」の科学論

     佐藤文隆著 2020年12月 青土社 2,000円+税

                              福井 杉本達也

本書は『現代思想』(青土社)の2019年9月から2020年10月まで連載された佐藤文隆の「科学者の散歩道」を書籍化したものである。筆者が科学といっているのは「19世紀中ごろの欧州先進国で成立した『制度としての科学』、『職業としての科学』のことである。前史のギリシャ古典哲学や中華帝国の技術、錬金術や古代天文学、といった多くの芽まで包括するものではない…科学は真空の中に登場したのではなく、技術、軍事、政治、教育、医療、宗教、哲学、学術、情報、芸能などの各業界の旧勢力との軋轢の中でシェアを確保し、成長した物語でとしてみることである」。西欧に発する「科学については地域の歴史や文化と独立した普遍主義的な見方が支配的」である。しかし、近年は「科学の世界での中国の台頭」が華々しい。そこで、著者の関心は「現代科学発祥の英仏独米ロはキリスト教の支配した同一性を持った社会である。それに対し中国はこれと同化しない大きな文明の歴史を背負った社会である…そういう中国が科学の中心に座るかもしれない…科学の普遍主義的コアと西洋科学の来歴に由来する周辺部は分離して中国流の新しい衣をまとうかもしれない」と考えることから始まっている。

本書では西洋科学発祥の一因を「メカニクスの下剋上」にあるとする。「メカニクスやメカニカルが近代以前の西洋では社会的な差別語であった」。古代市民は「奴隷的で機械的な職業でない自由な職業」に価値を置いた。近代の入口でも「機械的技術に対する軽蔑…メカニックは自由人的、貴族的、騎士的といった価値のはんたいがわにあるものだった」。

蔑視されていた西洋起源の現代科学は、「一つにはギリシャ哲学やキリスト教神学といった学問世界の革新と、二つには航海・鉱山・軍事や錬金術などの技術や実験の合理化で成立し…旧勢力を『押しのけて』入れ替わったのである」。「各地の文明を支えていた伝統技術から科学と結びついた科学技術への移行は産業革命、資本主義、労働者階級の登場、都市化、帝国主義といった19世紀政治現象と一体であった。科学技術の最大の特徴は『大量化』の能力である」。「近代科学技術革命とは、社会的力を持ってきたのに学問世界から遠ざけられていた技術職能集団を引き込んで、学問世界の主導権を争った革命であった」。したがって、メカニクスには「人間を扱う仕事とちがい、『心がない』『ものを考えない』」卑賎な仕事とのイメージがつきまとう。「ガリレオ、デカルト、ニュートンらの活躍で学問世界にメカニックスが参入してから現代の『職業としての科学』が登場する」。

「自然哲学はwhyを論ずる」ことであり、「howは『機械的』『数学的』の仕事」であり、学問世界と身分の違う連中の世界のこと」であるとされてきた。「アリストテレスでは落下は上下左右の区別のある有限なこのコスモスに由来する自然の力である。斜面という『機械』はこの自然な出来事を妨げるコスモスでない異質なものである。しかし、斜面の角度を“徐々に連続して変える操作”はこれらの二つの作用を同質なものとして扱うことを意味する。斜面の傾斜角度を90度(鉛直)から0度(水平)まで変化させる状況を数学的に表現することで、コスモスを無化している」。「『howは下々の関心』だと見下された『下々』が数学上の証明で『コスモス』のwhy自体を突き崩した下剋上の物語である。『下々』の言説が効果を発揮できたは、身分の上下にまたがって存在する数学があったからである」。

「メカニクスは力学から始まり情報学に広まり、更に拡大していくであろう。理由は単純でメカニクスに便利なコンピュータや通信技術のテクノロジーが身近な社会に普及したからである。印刷術や用紙の低価格化が学問の性格を変え、口頭試験から筆記試験への変化が選ばれる才能の質を変えてきたように…データとメカニクスの技術の普及が学問世界に引き起こす影響は、文系理系を問わず、巨大なものであろう」とする。

早稲田大学の井上達彦教授は、中国のの躍進ぶりを理解するための視点としてリープフロッグを紹介する。「リープフロッグとは、経済や社会インフラで後れを取っている新興国が、先進国を超えた発展を見せるという現象である」。「第1は、同じ経路を短期間で進む『パスフォロー』。「 第2は、特定の段階をスキップして短縮する『ステージスキップ』である。固定電話のインフラを整備する段階を飛ばして、携帯電話の普及を進めるというのがその典型である」。「第3は、新たな技術で道筋をつくる『パス創造』であり、先進国の社会ではまだ実装されていない技術を導入することである。世界に先駆けて実装した、決済や与信のシステムはこれに該当する…中国企業の学習サイクルは速い。…仮説検証サイクルを『小さく、速く、賢く』回すことが当たり前になっている。経験学習のサイクルが速く、学習の時間密度も高いので、創造されたパスを一気に駆け上がって」いくとする(『東洋経済』2021,6,5)。

中国を巡っては、「専制主義」という批判、半導体を中心とする米中貿易戦争、新型コロナウイルス、ウイグル問題、台湾、香港等々さまざまな問題が山積するが、これは中国のGDPが近々米国を追い抜くという事態の中で発生している。しかし、データとメカニクスは今、中国が最も得意とする分野である。ここで、もう一度ボーアの量子力学の思想善導「黙って計算しろ!」となるのであろうか。中国を「専制主義」と批判する普遍主義を標榜する「民主主義」にも科学同様、特殊西欧の“残滓”がある、というか、「帝国主義」の”残滓“がある。独自の文明を背負った中国に無理やり押し付けようとしてもうまくいくはずもない。

本書は「メカニクスの西洋科学は20世紀において100倍にも規模を拡大したが、その中でメカニクスと西洋学問の衣の分離が進んだ」。「中国のような異なる学問の伝統をもつ社会の中にこのメカニクスが移入されれば、メカニクスは新たな衣をまとった営むに変貌するかもしれない」と締めくくる。

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【追悼】森信成先生没後50年によせて

【追悼】森信成先生没後50年によせて

 1971年7月25日哲学者森信成さんは亡くなった。私は、1972年の大学入学であり、生前、大学での講義や講演を聞くことは叶わなかった。民学同加入後は、社研の例会や組織内の学習会では、必ず森先生の著作を中心に森哲学を学ぶことになった。
 思想的統一・議論抜きの、組織の統合・分裂を先行させてはいけない、思想の平和共存は行ってはならず、議論・論争は民主主義的手続きに則って、徹底的に行うこと、組織の利害を大衆運動の利益の上においてはいけない、党派性とは、大衆運動への適格なスローガンを提起することで明確になることなどなど、以後、労働運動や社会運動に関わる心構えは、森先生の教えに基礎があると考えている。
 中国共産党が創立100周年ということで、習近平は人民服姿で登場した。政治的民主主義が存在せず、ウィグルやチベットの民族的自治権を認めない、この国をどう評価したらいいのか。中華人民共和国の歴史、文革の功罪など、いろいろ読んでみたが、最後は森先生の「毛沢東哲学批判」ということになった。
 マル自(「マルクス主義と自由)や史根(「史的唯物論の根本問題」)は、学習会の素材として何度も読んだが、「毛沢東『実践論』・『矛盾論』批判」(刀江書店)をじっくり読むと、60年代、「唯物論研究」誌を舞台にした、日共系(当時の日共は、中国派)学者との徹底した議論に、論争家として森先生の奮闘が伝わってくる。(市大図書館に「唯物論研究」誌を確認に行ったのだが、合本の何冊か欠落状態で、情けない限りであった。)
 
 哲学分野は、どちらかと言えば苦手な私だが、没後50年ということで、以下に、著作一覧、追悼集からの再録、年譜などまとめることで、森哲学を現代に生かすことができれば、と考える(佐野秀夫)

(※ 以下の資料は「知識と労働」第3号「特集森信成追悼」を基本にしています)

1 森先生の著作一覧

2 森先生の生涯 (追悼文より)

京都大学哲学科 (小野義彦さん
「民科」「大阪唯研」(山本春義さん)
大阪市立大学 (横田三郎さん)

3 森先生の哲学思想

4 追悼の言葉

吉村励さん
大阪労働講座
民主主義学生同盟統一会議

5 森先生略年譜

6 関連資料

大阪唯物論研究会 会報 No1(1959年6月1日)

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【投稿】バイデン政権・キューバ軍事侵攻の危険性--経済危機論(56)

<<「キューバを生かせ!」>>
 7/23付けニューヨークタイムズ紙に、世界中の元国家元首、政治家、著名な知識人、科学者、聖職者、芸術家、音楽家や指導者、活動家や団体、個人、400人以上の人々が署名したバイデン米大統領への緊急の公開アピールが、一面全面広告として掲載された。ここの「キューバを生かせ Let Cuba Live!」と題した公開レターは、ホワイトハウスに対し、パンデミックを制御し、キューバに住む人々の命を救うためのキューバの努力を妨害しているトランプ前大統領が課した243に上る一方的な追加制裁を直ちに解除することを求めている。署名者には、政治家、著名な知識人、科学者、聖職者、芸術家、音楽家、指導者、活動家など多様な人々、団体が名を連ね、俳優のジェーン・フォンダ、スーザン・サランドン、オリバー・ストーン、ダニー・グローバー、マーク・ラファロ、ルーラ・ダ・シルヴァ元大統領(ブラジル)、ラファエ
ル・コレア元大統領(エクアドル)、ヤニス・ヴァロファキス、ミュージシャンのジャクソン・ブラウン、ブーツ・ライリー、知識人のロクサンヌ・ダンバー=オルティス、ジュディス・バトラー、コーネル・ウェストなどが署名している(署名者全員の名前は、「Let Cuba Live!」のサイトhttps://www.letcubalive.com/で公開されている)。
 このバイデン大統領への緊急パブリック・アピールは、「食料や医薬品の輸入にはドルへのアクセスが必要であることを考えると、キューバによる送金やグローバル金融機関の利用を意図的に遮断することは、特にパンデミックの際には考えられるものではありません。直ちに大統領令に署名し、トランプ大統領の243の強制措置を無効にする 」ことを求めている。
 この書簡は、The People’s Forum、CodePink、Answer Coalitionの共同イニシアチブの第一弾であり、その目的は、米国の不道徳で近視眼的な政策を変えようとすること、そしてキューバの人々に医薬品や医療用品を提供することを明らかにしている(CODEPINK For Immediate Release- July 22, 2021)。

<<「これは始まりにすぎない」>>
 キューバをめぐる事態の急激な変化は、7月11日(日)、明らかにソーシャルメディア(「#SOSキューバ」)を介して事前に計画・調整された数十の反政府抗議活動が、キューバ全土で同時に行われたことであった。ハバナ郊外のサンアントニオや、コロナウイルス患者が急増しているマタンサスなどでは、抗議活動が暴力化し、窓ガラスが割られ、店が略奪され、車がひっくり返され、石が投げられ、人々が暴行を受ける事態にまで険悪化し、逮捕者も出る事態となった。しかしこの抗議行動は、週末に発生したときと同様、すでに沈静化しつつある。問題は、今回の抗議行動が全体として一つの大きな「反政府」デモであると一般化することはできないし、同時に、抗議行動の参加者を「CIAの協力者」や「反革命分子」というレッテルを貼ることもできない、という指摘の重要さである(People’sWorld 2021/7/16)。

 キューバのミゲル・ディアス=カネル大統領は、キューバが抱える物質的な苦難に対する正当な不満があることを認め、なおかつキューバ革命の成果を防衛することの重要性を訴えている。この大統領の呼びかけに、大規模な革命防衛デモが行われ、アメリカが介入しようとたくらむ事態は今のところ避けられている。逆に、アメリカの草の根のキューバ支援は、バイデンの意向とは無関係にどんどん進んでおり、12トンの医療用品、600万本の注射器などが報じられている。

 しかしバイデン政権は、このハッシュタグ#SOSキューバで、反対派の動員のみならず、軍事介入までを要求する事態を放置、助長し、7月11日の抗議活動における逮捕を非難する共同声明に署名するよう、米州機構(OAS)のメンバーに圧力をかけていることが暴露されている。7/21、キューバのブルーノ・ロドリゲス・パリヤ外相は、「米国国務省は、OAS諸国の政府に対して残忍な圧力をかけ、拘束されている人々を解放するよう求める声明への参加や同様の声明の発表を強要している」と抗議している。
 7/15、バイデン大統領は、「キューバは不幸にも失敗した国家であり、市民を抑圧している。共産主義は失敗したシステム」、「破綻国家」とまで呼び、自らのキューバに対する封鎖・制裁政策の継続には一切触れもせず、責任など一切関知しない態度を鮮明にしている。しかし封鎖は、主権国家の自決権を謳い、強制的な政権交代を禁止した国連憲章に違反しており、一方的な強制制裁措置は、ジュネーブ条約やハーグ条約で禁止されている、集団的懲罰であり、全く違法なものである。バイデン政権自身は、アパルトヘイト国家であり軍事テロ国家であるイスラエル、執拗にイエメン無差別爆撃・軍事テロ攻撃を行っている、全く民主主義とは無縁な専制国家サウジアラビアと強力な同盟関係にあり、そのテロ攻撃を軍事援助と財政援助を通じて支援しているのである。失敗し、破綻しているのは、バイデン政権自身なのである。
 バイデン政権は7/22、キューバの反政府デモ弾圧に関わったとして、国内法に基づき、新たにロペス・ミエラ国防相と内務省特殊部隊を制裁対象に指定と発表し、バイデン大統領は声明で「これは始まりにすぎない」とまで強調している。何の「始まり」なのか。軍事侵攻の可能性まで検討され出している危険な事態である。
 6月の国連総会では、29年連続で米国の対キューバ禁輸措置を非難する決議が採択されたが、投票は184対2で、反対票を投じたのは、ついに米国とイスラエルだけという事態にまで追い込まれているのである。米国は キューバを「テロ支援国家」と呼びながら、残酷な封鎖に加えて、キューバに対するテロを奨励・助長し、今も継続しているのである。それらのテロ組織には、「キューバ・アメリカン・ナショナル・ファウンデーション」、「アルファ66」、「コマンドスF4」、「独立・民主キューバ」、「ブラザーズ・トゥ・ザ・レスキュー」などがあり、豊富な資金と、CIAやFBIの支援を得て、米国内で堂々と活動して来たのであり、パンデミック危機の今こそ絶好の機会と蠢動している。オバマ政権は、キューバをテロ支援国家のリストから一旦は外したのであったが、トランプ前政権はキューバを再びリストに加え、243に上る一方的な追加制裁を新たに課し、バイデン政権はそれをいまだに引き継いでいるのである。「我々はキューバの人々と共にある」と言いながらこれである。偽善者=ジョー・バイデンと言えよう。
 そして現実にキューバは、これらの制裁とパンデミックの複合的な影響で、GDPは2020年には11%も減少し、観光客は2019年に比べて75%、輸入品は30%減少しており、経済的苦境と日々闘っている、闘わざるを得ない状況なのである。
 しかしそれにもかかわらず、キューバは国際主義的な連帯精神を実際に実行し、何千人ものキューバ人医療専門家がイタリアやブラジルをはじめ40カ国でコロナウイルスの患者を治療し、世界各地に派遣した医療関係者の旅団がノーベル平和賞にまでノミネートされ、さらに中南米で唯一、ファイザー社やモデルナ社に匹敵する有効性を持つ独自のワクチンの開発・製造に成功し、2,100,000人以上のキューバ人がワクチン接種を受けるところまで成果をもたらしている。無料の医療、数百万人が学位取得レベルまで無料で受けられる教育、総合的に非常に高い健康と教育の指標を達成しているという、まさに社会主義政策の成果が根付いているのである。
 こうしたキューバの成果こそが、バイデン政権にとっては癪の種であり、共和党と共同歩調、超党派外交を取るバイデン政権にとって、パンデミックの危機を利用して、さらなる封鎖と制裁に輪をかけ、一挙に社会主義政権を押しつぶしてしまう危険な路線に足を踏み出した可能性が高い、とも言えよう。しかしそうした危険な路線は逆に自らの政権を凋落させる政治的・経済的危機をもたらすであろう。
(生駒 敬)
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【投稿】「脱炭素」茶番劇と新エネルギー基本計画

【投稿】「脱炭素」茶番劇と新エネルギー基本計画

                          福井 杉本達也

1 大山鳴動・何も決まらない新エネルギー基本計画の原案-原発も帳尻合わせ

経済産業省は2021年7月21日、新しいエネルギー基本計画の原案を公表した。目標の2030年度において、総発電量のうち再生可能エネルギーで36~38%、原子力はこれまで同様の20~22%を賄うというもので、再生エネの内訳は太陽光が15%、風力で6%、水力で10%などを想定。原案には『再生エネ優先の原則で導入を促す』と明記し」、30年度で19年度の2倍に増やす(日経:2021.7.23)。しかし、原発の新増設や建て替え(リープレス)も明記しなかった。これに対し、原発推進の橘川武郎国際大教授でさえ「リアリティーに欠け大きな禍根を残す…(電源構成案は)…率直にいって帳尻合わせだ」と酷評した(日経:同)。原発は30年度には電力から申請のある27基をフル稼働する必要がある。しかし、不祥事の相次ぐ、東電柏崎刈羽原発などは再稼働のめどはたっていない。また原案では、原発は「可能な限り依存度を低減」するという文面は残っている。一方、19年度の発電量の32%は石炭火力である。二酸化炭素の排出量が多いとして古くて効率の悪い石炭火力の休廃止を進めているが、それでも30年度では19%を計画に組み込む。

 

2 古い原発を80年間(「60年超」)も運転

2021年7月16日の福井新聞は「政府が原発の運転に関する「原則40年問、最長60年間」の法定期間の延長を検討していることが15日分かった。自民党や経済界の一部が求める新増設やリプレース(建て替え)は、世論の強い反発が予想されるため見送り、既存原発の長期的な活用を模索する。来年にも原子炉等規制法改正案をまとめる方向で調整する。ただ老朽化により安全性への懸念が強まることは避けられない」と報じた。政府は2012年6月、原子炉等規制法を改正し、原発の運転期間を原則40年と定めた。例外として原子力規制委員会が審査して認めれば、1回だけ最長で20年延長できる。さる6月23日に再稼働した2004年8月に二次系大口径配管破断事故を起こした関電美浜3号(参照:福井新聞:事故写真)が国内初の40年超運転である。だがここにきてさらに20年の再延長が浮上した。合わせて80年間も運転することになる。菅政権は昨年、50年の「脱炭素社会の実現」を打ち出した。目標達成には、排出量の4割を占める電力部門の対応が鍵を握る。約30基の原発は必要というが、建設中の3基を含め36基。全ての原発を例外的に最長20年延命させても寿命を迎え、50年に23基、60年には8基だけになる。新増設や建て替えには世論の反発が強い。「経産省幹部は。不祥事の続発を背景に『新増設やリプレース(建て替え)を前面に打ち出すのは難しい状況だ』と認める。発電量の水準を保とうとすれば運転期間を長くするししか道はなく、『延命』の選択は苦肉の策」である(福井:2021.7.16)。政府は、来年にも法改正案をまとめる意向である。しかし、古い原発を使い続ければ事故の危険性はさらに高まる。もちろん耐震性も低いままである。いま、関電美浜原発構内ではテロ対策施設工事のため足の踏み場もない。工事が完成しなければ、無理やり再稼働した原発もすぐ停止することとなる。2004年の事故は配管が運転開始から28年間、一度も点検されなかったことが原因だったことをすっかり忘れてしまっている。

 

3 勝算もなく打ち出した50年「脱炭素社会の実現」

菅首相は今年4月22日の温暖化サミットで、30年度に温室効果ガスを13年度比で46%削減するとの新たな地球温暖化対策の目標を掲げた(50年実質ゼロ)。掲げたといえば聞こえが良いが、何の勝算もなく欧米に無理やり言わされたというのが正解である。達成には、二酸化炭素(CO2)排出量の4割を占める電力部門の対応が鍵を握る。特に排出量は石炭と石油だけで発電部門からでるCO2の過半を占める。これを全廃しなければ46%削減はおぼつかない。この発電量を賄うのに原発が必要というが経産省の論理である。ところが、19年度の電源構成は火力が75・7%、再生エネが18・1%、原子力はわずか6・2%というのが現実である。

経産省では「脱炭素宣言」を原発再稼働の好機ととらえたが、足元はおぼつかない。逆に温暖化ガス削減に向けて政府が6月4日にまとめたグリーン成長戦略では、原発を「引き続き最大限活用していく」との表現が削除されてしまった。閣内で小泉環境相や河野規制改革担当相が反対したといわれる。昨年12月に策定したグリーン成長戦略 では、原子力は「確立した炭素技術。可能な限り依存度を低減しつつも、安全性向上を図り、引き続き最大限活用していく」と記載されていた。「確立した炭素技術」という表現さえなくなった(福井:2021.6.4)。カネのために先に関電美浜3号、高浜1・2号の40年超原発の再稼働に同意した福井県の杉本知事は梯子を外され、江島経産副大臣に対し「『大変驚いている』と述べ、経産省の認識をただした。」(福井:2021.6.10)。先の読めないなさけないやり取りである。

 

4 「脱炭素」は欧米金融資本の茶番劇

温暖化サミットにおいて、欧州委員会は、どういった事業が温暖化防止に貢献するかを示す基準「EUタクソノミー」を公表した。金融機関や企業に詳細な基準を明示し、企業経営や金融商品のグリーン化を目指すとする。それぞれの事業がどういった基準ならば「グリーン」と判別されるかを明示している(日経:2021.4.23)。「まるで『闘魔(えんま)大王』みたいに企業が選別される」。このような受け止め方が広がる。欧州発のルールが世界の潮流となる。欧州各国によるガソリン車の販売規制の表明を「欧州自動車メーカーのディーゼル不正を機に欧州が有利になるようなルールに変えてしまった」と伊藤忠総研の深尾三四郎氏は指摘する。PHVはEVよりもCO2排出量は少ない。しかし、EU基準ではアウトとなる(日経:2021.7.24)。日本は勝手に競争の土俵を変えられ、変えられた土俵の上で競争せざるを得なくなる。「脱炭素」とはWTOの枠外での新たな貿易障壁である。それを何の交渉もすることなく、のほほんと受け入れる我が国の首相とはいったいどこを向いているのかを考えざるを得ない。

 

5 ドイツは自力で米の圧力を跳ね除けノルドストリーム2を完成させる

EUの強いルールにおいても「電力部門では判断を先送りした分野もある」。「石炭火力発電は一律にタクソノミーの適用外としている。天然ガスと原子力については結論を先送りにした。天然ガスを巡っては、ポーランドなど東欧諸国を中心に脱石炭を進める上で当面は認めるきだと訴える」(日経:2021.4.23)。自国にとって都合の良い分野では相手国に押し付け、自国に都合の悪い分野についてはルールを断固として拒否するのである。

7月21日、米独政府はドイツとロシアを結ぶパイプライン計画(ノルドストリーム2)について、米が計画を容認すると発表した。米独は計画を巡る長年の対立に終止符を打った。ロシアから欧州向けのガス供給をめぐっては、ウクライナを経由するパイプラインがある。 ノルドストリーム2はバルト海に敷設されたため、ウクライナを迂回できる(日経:2021.7.21)。これまで米国は欧州(ドイツ)とロシアを分断するため、ロシアからのウクライナ経由のガスの安定供給を執拗に妨害してきた。ウクライナでのオレンジ革命・マイダン・クーデターなどでロシアの下腹部を攻撃してきたが、それが最終的に失敗したことを宣言したのである。今後、ウクライナは米国にとってさして重要な国ではなくなる。単なる破綻国家に戻る。ドイツは日本のような帳尻合わせのエネルギー計画は立てない。何十年にもわたる長期的なエネルギーの安定供給を重視する。欧米金融資本に恫喝されてその場しのぎのエネルギー計画を作成したり、数字合わせに旧式原発の再稼働を試みたりすることはない。

 

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【投稿】イギリス艦隊は極東でもロシアと対峙へ

黒海でロシアを挑発し、地中海ではイラクの武装勢力へ空爆を行い、意気軒昂とインド洋を進むかに見えたイギリス空母打撃群(CGS21)であるが、ここにきて様々なトラブルに見舞われている。
空母「クィーン・エリザベス」を含む4隻でコロナクラスターが発生、乗組員100人以上が感染したことが明らかになった。フリゲート「ケント」ではコロナとの関連は不明だが、7月10日に乗組員一人が死亡した。
さらにミサイル駆逐艦「ダイアモンド」がエンジントラブルで艦隊から脱落し、シチリア島で修理中であることが明らかになった。
欧州から極東へ向かう艦隊が次々とトラブルに会うのは、「バルチック艦隊」を想起させる。この時はスエズ運河通行拒否など、イギリスによる妨害の影響が大きかったが、今回はイギリス艦隊が悲運に見舞われており、ロシアの呪いが通じたわけではないがプーチンは大笑いだろう。
コロナについては中東の寄港地で感染した可能性が高い。先にはジプチの自衛隊基地でクラスターが発生し、最近にはソマリア沖に展開する韓国の駆逐艦で乗員の8割が感染する事態となっている。今後コロナが猖獗を極めるインドや感染拡大中のシンガポールに寄港し、西太平洋を進む予定である。
CGS21司令部は「作戦に支障はない」としており、予定通り進めば9月には朝鮮海峡を抜けて日本海に入り、津軽海峡を通過し太平洋にでる予定となっている。これは明らかにロシアを挑発するコースである。ウラジオストックにどこまで接近するかにもよるが、ロシアは昨年11月にアメリカがピヨトール大帝湾で「航行の自由作戦」を実施した時以上の対応をとるだろう。
一方、中国に対しては南シナ海での行動に不確定要素はあるものの、台湾海峡は通らずに不要な刺激を避けるコースとなっている。
黒海で始まり日本海で終わる行動を見ればCGS21の主要な狙いは、日本が期待している中国牽制ではなく、ロシア牽制であることが判る。
日本政府は、ソマリア沖での海自との共同訓練を皮切りに、随時CGS21との演習を積み重ねていく計画であるが、日本海で共同歩調をとればロシア側からの厳しい反発は避けられない。
政治情勢が流動的な時期に緊張が高まれば、対露没交渉の菅政権としてはなすすべもないだろう。

その後艦隊は横須賀、呉、佐世保、舞鶴に分散して寄港する予定となっているが、その際は厳重な検疫が必要となる。昨年の「プリンセス」に続き「クィーン」がコロナ禍にみまわれたわけであるが、「女王陛下」を特別扱いすることは許されない。
また外国の艦艇が寄港した際には市民対象の一般公開が行われるが、「希望者へのワクチン接種完了が10月から11月」という状況では実施不可能だろう。
菅政権はCGS21の極東来航を政権浮揚のイベントにせんとしているが、オリンピックと同様その目論見は外れるだろう。(大阪O)

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【投稿】米独サミットは「失敗だった」--経済危機論(55)

<<ワクチン特許放棄に一言も触れず>>
 7/15、バイデン米大統領とドイツのメルケル首相の米独首脳会談がホワイトハウスで開かれたが、焦眉のワクチン特許放棄に関しては一片の合意さえも得られず、両首脳の記者会見でも一言も触れられなという失態であった。
 バイデン氏は、5月にバイデン政権として、新型コロナウイルス用ワクチンに関わる知的財産権(IP)の保護を放棄することを支持するとの声明を発表し、国際社会から多くの支持と期待を寄せられていたにもかかわらず、イギリスと並んで特許権放棄の最大の障害とみなされていたドイツを説得できなかったのである。
 ドイツのビオンテック社のワクチン開発に公的資金を投入してきたドイツ、同社と組むアメリカのファイザー社の連合によるワクチンの一時的な特許権放棄は、パンデミック危機拡大を阻止し、ウイルスの拡散を収束させ、混迷する経済危機を打開する途上において決定的なかなめだったのである。

 首脳会談でバイデン氏は、メルケル首相との個人的な会談の中で、ワクチンの特許放棄について一応の言及はしたとされているが、優先課題とはしなかったのである。明らかな後退であり、自らの政策に対する責任放棄でもある。

 一方のメルケル氏は、7/15の記者会見の中で「より多くの人がワクチンを接種すればするほど、私たちは再び自由に生きることができるようになります」と述べ、「私たちは今、まだ自発的にワクチンを推進している段階です。皆さんにお願いしたいのは、知り合いや信頼できる人がいるところではどこでも、ワクチンのことを訴えてほしいということです」と語っている。このように語りながら、あくまでもコロナウィルス・ワクチンの一時的な特許免除に対する反対を取り下げていないのである。偽善とも言えよう。

<<「ワクチンの滞留と在庫増」という異常>>
 米議会進歩派議連の議長であるプラミラ・ジャヤパル下院議員は、7/15に声明を発表し、「メルケル首相がワシントンに到着したのは、世界中でウイルスのデルタ変異株が急増し、富裕層の国では80%のワクチン投与が行われているのに対し、低所得国では0.4%しか投与されていない状況の中なのです。世界のワクチンの公平性を優先し、世界のワクチン生産と治療アクセスを迅速かつ公平に確保しない限り、パンデミックは終わりません。ドイツが特許権免除の承認を保留する限り、世界中の何百万人もの人々の命と、ウイルスを粉砕する我々の能力が脅かされているのです。」と強調している。

 米国の環境保護・消費者の権利擁護に取り組む非営利団体パブリック・シチズンのグローバル・トレード・ウォッチのディレクターであるロリ・ウォラック氏は、バイデン氏が特許免除に関してメルケル首相を動かすことができなかったことは、「パンデミックを終わらせるための努力に打撃を与えるものであり、今回のサミットは失敗であった。特許権免除を早急に成立させ、より多くのワクチンや治療薬を世界中で生産できるようにすることを優先させるべきである」との声明を発表している。

 7/16、米独首脳会談の翌日、世界保健機関(WHO)は、これまで比較的に少なかったアフリカで、コロナウイルスによる死亡者数が前週から43%も増加し、7月11日までの1週間で6,273人の死亡者を記録、ナミビア、南アフリカ、チュニジア、ウガンダ、ザンビアが新たな死亡者数の83%を占め、しかも感染力の高いデルタ型の感染が広がり続け、8週間連続で感染者数が増加し、アフリカの21カ国で検出されていることを明らかにした。7/16付けニューヨーク・タイムズ紙は、このWHO報告について、1月から5月までに出荷されたワクチンが予想よりも6,000万本も少なく、「すべてが計画通りに進んだとしても、人口の約7%に完全なワクチンを接種するのに十分な2億本以上のワクチンを、10月までアフリカに届けることができないだろうと予測している」と報じている。
 それにもかかわらず、米・欧ではワクチンの滞留は1.5億回分にも達し、余剰を抱え、在庫が米・英では5割、欧州では7割増加しているという(日経紙・7/18付け報道)。米欧は、それぞれ自国の変異ウイルの拡大と、ワクチン接種3回必要事態に備えだして、備蓄に動き、世界的蔓延拡大を無視しだしたのである。政治的・道義的危機であると同時に、さらなる経済的危機をも呼び込み、犯罪的、とも言えよう。
(生駒 敬)
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【投稿】東京都議選が突きつけたもの--統一戦線論(74)

<<二階氏「小池氏はよくやっている」>>
 7/4の東京都議会議員選挙の投票日直前まで、大手メディアは、都民ファーストの議席一けた台への激減、逆に自民、公明は合わせて過半数(64議席)以上獲得、それどころか「自民だけで50に届くかもしれない」との予測が大半であった。
 ところがふたを開けてみると、自公で過半数どころか、自民33議席、公明23議席、合わせても56議席にとどまった。都民ファーストは得票数、得票率とも減らしはしたものの、現有45議席から31議席に減らし、自民とは2議席差、第2党にとどまった。自公に都民ファーストを加えれば、ある意味で与党体制は万全なのである。今回の都議選はそのことを改めて再確認させたと言えよう。
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 都議選から一夜明けた7/5、小池都知事は早速、自民党の二階幹事長、公明党の山口代表と相次いで面会し、今後も都政への協力を要請し、共に手を携えていく姿勢を示し、二階氏は、「小池氏はよくやっている」と賛辞を呈している。互いに持ちつ、持たれつなのである。
 自公と都民ファーストに違いはあれど、その緊縮政策・規制緩和路線=新自由主義路線、社会保障縮小路線では同一なのである。ただし、オリンピックとパンデミック対策では、補完しあいながらも、いずれがイニシアチブをとるかで争われ、自公は後手後手に終始したのに対して、小池知事側は、最終盤、菅政権側のオリンピック各会場最大1万人「有観客」路線に対して、「無観客」路線を対置した。しかも小池知事は過労で入院、選挙終盤で公務復帰、最終日に酸素ボンベを傍らに置き、都民ファーストの応援回りをして巻き返しを図ったのであった。
 新型コロナウイルス感染危機の再拡大とオリンピックを直前に控えた今回の選挙で、自民・公明与党政権は、その後手後手、ワクチン不足、失策の連続に都民から明らかに「ノー!」を突き付けられたのである。都民ファーストも同罪であるのだが、小手先でかわしたにすぎないものであった。しかし、菅政権にとっては今回の都議選の結果は大きなダメージであり、今秋の衆院解散・総選挙を目前に控えて、「菅首相では選挙の顔にはならない」との危機感が自民党内に拡がり出したのも当然であろう。

<<これを「歴史的快挙」「勝利」というのか>>
 東京都議選の党派別得票数と得票率は、以下の通りである。
                 得票数  得票率 前回得票数 得票率
 自民 1,192,796   25.69%      1,260,101     22.53%
 都民 1,034,778   22.29%      1,884,029     33.68%
 公明    630,810   13.58%          734,697    13.13%
 共産    630,158   13.56%          773,722    13.83%
 (ここでは立憲民主党は前回と比較できないので省いている)

特徴的なのは、いずれの党も得票数を減らしている。しかしこの得票数の減少は、投票率が前回(2017年)より8.89ポイント低い、42.39%で、過去、2番目に低い投票率であったことからすれば当然とも言えよう。
 しかし、得票率の減少は、それぞれの党の現時点での票を獲得する力の明らかな減少を示している。自民、公明両党は、得票率を上昇させているのに対して、都民ファーストと共産党は得票率を減少させているのである。
 ところが、7/6付け・しんぶん赤旗は「4日投開票された東京都議選(定数127)で日本共産党は現有18議席を確保し、1議席増の19議席を実現しました。3回連続の前進は1965~73年以来、ほぼ半世紀ぶり。「歴史的快挙」(志位和夫委員長)となりました。」と報じている。今回選挙時18議席で「1議席増」と言うが、前回も19議席獲得していたという事実を報じていないのである。議席数現状維持、得票数、得票率とも減少している現実を直視していないのである。共産党の指導部はなぜこんな姑息な報道や評価をするのであろうか。
 評価されてしかるべきなのは、立憲民主党の大幅な躍進であり、これに大いに貢献した共産党の「野党共闘」路線なのである。立憲民主党は、現有8議席から15議席に大幅に議席を増やしたのである。
 立憲民主党の安住国対委員長は7/5、国会内で記者団に、同党が15議席を獲得した東京都議選では共産党との候補者一本化が奏功したとの認識を示し、一方、国民民主党の候補4人が全員落選したことを踏まえ「リアルパワーは何なのかを冷静に見なければ」と指摘し、共産との協力を強く否定してきた国民や連合東京に苦言を呈している。
 問題は、この「野党共闘」、まだまだ不完全で、それぞれの「住み分け」や「取引き」に終始していたり、「野党と市民の共闘」と言いながら市民不在、既成幹部間のなれ合い、もたれあいで有権者の期待にまともに応えていないことである。港、西東京、南多摩などの選挙区では、野党共闘さえ成立せずに共倒れとなっている現実がある。
 こうした厳しい現実こそが、自公・都民ファーストの跳梁・跋扈を許しているのであり、それを克服する、野党共闘、統一戦線の路線こそが要請されていると言えよう。
(生駒 敬)
カテゴリー: 政治, 生駒 敬, 統一戦線論 | コメントする

【投稿】米・英・日:対中・対ロ軍事挑発の危うさ--経済危機論(54)

<<バイデンのイラク・シリア空爆署名>>
 6/27、米軍がF-15とF-16戦闘機を使って、イラクとシリアで行った最新の空爆は、バイデン政権がトランプ前政権よりも危険な軍事挑発戦略、緊張激化路線に乗り出した可能性を示唆している。
 米国防総省のカービー報道官によると、この空爆はバイデン大統領の指示により行われたもので、米軍は、イランの支援を受けた民兵組織が同地域の米軍関係者や施設に対する無人機攻撃を行うために使用している「シリアの2カ所、イラクの1カ所にある作戦・武器保管施設」を攻撃したという。「今晩の空爆で示されたように、バイデン大統領は米軍関係者を守るために行動することを明確にしている」とし、バイデン政権は、この空爆をあくまでも「防衛的」なものとして正当化している。しかし、問題は、この空爆がイランとの核取引を復活させるための交渉の最中に実行されたことである。強硬派と言われるイランの次期大統領ライシ氏が対米交渉に前向きであるにもかかわらず、トランプ前政権が2018年に破棄した「共同包括行動計画(JCPOA)」の復活交渉を棚上げ、あるいは放棄し、イランに対する壊滅的な制裁を強化する「最大限の圧力」作戦、つまりはトランプと同じ路線、より危険な路線に傾斜しだした可能性である。
 米国は、イラクに約2,500人、シリアに約900人の兵士を駐留させているが、いずれも違法な駐留である。米軍のイラク駐留は、2003年の違法な侵略以来の違法な駐留の継続、昨年のイラク政府の要請による退去を拒否して居座っているに過ぎないものであり、シリアにはシリア政府の許可なく違法に駐留しているものである。したがって、違法な駐留米軍には、そもそも「防衛的な行動をとる」権利など存在しないのである。バイデン政権が今回の空爆に使っている法的正当性など、根拠なしなのである。
 当然、イラクのムスタファ・アル・カディミ首相は、今回の米軍の空爆に対して、即座に「昨夜、イラクとシリアの国境にある施設を標的とした米国の空爆を非難する。これは、すべての国際条約に従って、イラクの主権とイラクの国家安全保障に対する露骨かつ容認できない侵害である」と非難し、バイデン政権にとっては予想外の手厳しい批判を招き、大きな溝を作ってしまったことである。
 シリアへの空爆では、住宅が爆撃され子ども1人が死亡し、少なくとも3人が負傷したという。直ちに、子どもや民間人が殺害されたことに対する報復として、デリゾール州にあるシリア最大のオマール油田に居座る米軍基地に対して少なくとも8発の「未知のグループによる」ロケット攻撃が実行されている。
 バイデン氏の空爆は、明らかに中東に新たな緊張激化のエスカレートを招いているのである。
 バイデン政権にとってさらに問題なのは、バイデン大統領が、議会の承認を得ずに空爆に署名したことである。この空爆の2週間前、6/17、米下院は、イラク戦争の開戦を承認した2002年の「軍事力行使権限承認(AUMF)」を廃止することを賛成268・反対161で可決したばかりであった。この歴史的に意義深い投票には、少なくとも49人の共和党議員も賛成に回っている。米憲法は、議会に宣戦布告の権限があると定めているが、AUMFにより、大統領に権限が委譲され、20年近くにわたって、民主・共和両党の大統領が軍事行動を正当化する根拠となってきたその根拠法の廃止が可決されたばかりのこの時期に、バイデン大統領は議会に諮ることなく、空爆に署名したのである。民主党のイルハン・オマール議員が、「このような暴力と報復の絶え間ないサイクルは、失敗した政策であり、私たちの安全を高めるものではありません。議会にこそ戦争権限があり、いかなるエスカレーションの前にも議会に諮られるべきなのです」と述べるのは、当然なのである。バイデン政権は、明らかに危険な道に踏み出しつつあると言えよう。

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【投稿】米英露の間に嵌る菅政権

6月中旬、ロシア太平洋艦隊はハワイ近海で、ミサイル巡洋艦など水上戦闘艦6隻のほか給油艦、病院船、さらにはカムチャッカ半島の基地から対潜哨戒機も参加する大規模な軍事演習を行った。
ハワイにこれだけの「敵性艦隊」が接近するのは、真珠湾攻撃の日本海軍以来のことである。今回ロシア艦隊はホノルルから約60キロにまで接近(日本の空母機動部隊は約350キロ)したが、実際演習のシナリオには「敵空母や陸上基地への攻撃」=「真珠湾攻撃」が想定されていた。
これに対してアメリカ軍はオアフ島からF22戦闘機を緊急発進させ警戒にあたり、さらなる接近に対してはイージス駆逐艦3隻を急派し監視を続けている。
これまでアメリカは太平洋海域においては対中国に傾注していたが、今回ロシア軍が長距離遠征能力を立証したことで、より困難な事態に直面することとなった。
今回の演習は6月16日のジュネーブでの米露首脳会談の前後に行われたが、対露強硬姿勢を崩さないバイデンに対するプーチンの回答である。米露首脳会談については、バイデンが対中露2正面作戦を回避するためなどと言われているが、実際は「真珠湾攻撃」に続き欧州でも緊張が激化している。
極東に向かうイギリス空母打撃群(CGS21)から2隻が分離して黒海に入ることは先の投稿で指摘したが、その一隻である英駆逐艦「ディフェンダー」が6月23日、クリミア半島沖でロシア領海を侵犯した。これに対しロシア軍機と国境警備隊艦船が爆弾投下と警告射撃を実施、イギリス艦は領海を離れたが、ロシア側は監視を続けている。
黒海では1988年にソ連艦艇が領海侵犯したアメリカ巡洋艦に体当たりを敢行したが、今回の砲爆撃はそれ以来のコンフリクトである。今後米艦を含むCGS21が極東に近づけば、ロシア太平洋艦隊が中国海軍と共同して反応することも考えられる。
ロシアは北方領土近海で日本漁船の拿捕や、択捉島での爆撃演習、さらには6月23日からはサハリンを含む地域で大規模軍事演習を開始するなど「非友好的」行動を頻発している。
これに対し菅政権は形式的な抗議を行うのみで依然として静謐を保っているが、米英の対応次第ではアジアでの対露緊張がさらに激化する可能性が高い。米英から共同歩調を求められれば、対中国で手一杯の菅政権は窮地に追い込まれるだろう。(大阪O)

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